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がん治療を経験したあと健康に過ごしていたものの、脚にむくみやだるさを感じていませんか。

下肢のむくみやだるさは、リンパ浮腫の代表的な症状です。リンパ浮腫は自然治癒しない進行性の病気なので、早めに医療機関で診察を受け、対処しましょう。

本記事では、リンパ浮腫の原因・症状や、日常生活での注意点・治療法を解説します。セルフチェック方法も紹介するので、気になる症状が表れた際は実践することを推奨します。

リンパ浮腫とは?

リンパ浮腫とは、リンパ液の流れが悪くなり、下肢や鼠径部などに局所的に溜まる病気です。リンパ液は水分やタンパク質、白血球などを含む液体で、老廃物や異物などを体外に排除する役割を持ちます。

下肢のリンパ浮腫の原因や症状を解説するので、詳しく知りたい方は確認しましょう。

原因

下肢のリンパ浮腫は、以下のような原因によって発症する疾患です。

  • 生まれつきリンパ管が細い
  • がん治療の影響でリンパ管の働きが悪くなっている

リンパ浮腫の患者さんのなかには、生まれつきリンパ管が細く、リンパ液の流れが悪い方がいます。

子宮がん・卵巣がんといったがんの治療は、下肢のリンパ浮腫の約8割を占める原因です。リンパ節を取り除く手術をしたり、放射線治療の影響でリンパ液が流れにくくなったりすることで発症します。

がんの治療より数箇月~10年以上あとまで、発症時期には個人差があります。

下肢に起こったときの症状

リンパ浮腫が下肢に起こったときの主な症状は、以下のとおりです。

  • むくみ
  • 静脈が見えにくい
  • だるさ・重さ
  • 皮膚を押すと痕が残る
  • 皮膚が硬い
  • 関節が曲げにくい

症状は、リンパ浮腫の進行度によって異なります。初期では自覚できないほどの症状しかなくても、中等度になると脚のだるさや重さが出てきます。重度の場合は、皮膚の変化や可動域の制限まで表れ、日常生活に支障をきたしかねません。

リンパ浮腫が生じるリスクのあるがん治療を経験した方は、自身の体をこまめにチェックし、少しでも早く症状に気づくことが大切です。

下肢のリンパ浮腫にいち早く気づくには

下肢のリンパ浮腫にいち早く気づくために、以下の2つのセルフチェックを試しましょう。

  • むくみやすい部位を知りチェックする
  • 定期的に下肢の太さを計測する

「むくんでいるだけ」と、リンパ浮腫を放置して重症化すると、治療効果が出にくくなる恐れがあります。セルフチェック方法を実践し、早期の受診につなげてください。

むくみやすい部位を知りチェックする

むくみやすい部位を知ってチェックすることは、下肢のリンパ浮腫の早期発見に欠かせません。

がん治療後のリンパ浮腫は、リンパ節を取り除いたり放射線治療を受けたりした部位の近くで発症しやすいといえます。リンパ節を切除した部位により異なるむくみやすい箇所を、以下の表にまとめました。

リンパ節を切除した部位むくみやすい箇所
骨盤内・下腹部
・陰部
・両方の下肢
鼠径部 リンパ節を切除したほうの下肢

子宮がん・卵巣がん・大腸がんなどを経験した方は、治療を受けた部位の近くを定期的に注意深くチェックしてください。

定期的に下肢の太さを計測する

リンパ浮腫にいち早く気づくためには、下肢の太さを定期的に計測することが大切です。1か月に1回ほど、以下の部分の太さを測りましょう。

  • 脚の付け根
  • 膝上10cm
  • 膝下5cm
  • 足首
  • 足指の付け根

各部位を同じ時間帯・体勢にて一定の位置で計測することが、より精度の高いセルフチェックにつながります。計測結果の記録をつけ、片側もしくは両側の脚が太くなってきた場合は、リンパ浮腫の診察・検査のために受診することを検討してください。

下肢がリンパ浮腫になったときの注意点

下肢がリンパ浮腫になったときは、以下の3点に注意が必要です。

  • こまめに体を動かす
  • 締め付けの強い服装を避ける
  • 肥満を予防する

リンパ浮腫の症状は、放置すると次第に悪化するため、治療と並行して日常生活での体のケアも求められます。

こまめに体を動かす

下肢がリンパ浮腫になったときの注意点の1つが、こまめに体を動かすことです。長時間の立位や座位を続けていると、リンパ液の流れが悪くなり、むくみも悪化します。

日々の生活のなかで、テレビを見ているときや家事の合間などに、以下のような軽い運動を続けましょう。

  • 膝を曲げ伸ばしする
  • 股関節や足首を回す
  • スクワットをする
  • ふくらはぎを意識してつま先立ちする
  • 足の指をグーの形に閉じたり開いたりする

デスクワークのように、やむを得ず長時間座りっぱなしでいる必要がある場合は、脚を台にのせることをおすすめします。

締め付けの強い服装を避ける

締め付けの強い服装を避けることも、下肢がリンパ浮腫になったときの注意点です。治療のために使用する弾性ストッキングを除き、タイトな下着やズボンなどを身につけると、リンパ液が流れにくくなるため、リンパ浮腫の悪化につながります。

特に、下腹部や脚の付け根に当たる部分にゴムが使用されている下着の使用は避けましょう。ウエストや脚が出る箇所にゆったりとした幅が確保され、やわらかなレース素材が用いられている下着がおすすめです。

足首が圧迫されにくい靴下や、足のサイズに合った靴を選ぶことも大切です。

肥満を予防する

下肢のリンパ浮腫になった際は、肥満体型にならないよう注意してください。脂肪が多くなると、リンパ管の圧迫にともないリンパ液の流れが悪化します。

自身の標準体重は、「身長(m)×身長(m)×22」で計算できます。以下のようなポイントを押さえ、健康的な体型に保ちましょう。

  • 栄養バランスの良い食事を心がける
  • 食事量は腹八分目を目安にする
  • よく噛んで食べる
  • 適度な運動をする

太りやすい方は、毎日体重を測定し、健康的な生活を意識することをおすすめします。

下肢に発症したリンパ浮腫の治療法

下肢に発症したリンパ浮腫の治療法は、以下のとおりです。

  • スキンケア
  • 圧迫療法
  • 用手的リンパドレナージ
  • 圧迫下での運動
  • 手術

リンパ浮腫は自然治癒しないうえ、放置すると症状が悪化します。病気が発見されたら、ただちに治療を始め、症状の進行を抑えることが大切です。

スキンケア

スキンケアは、下肢に発症したリンパ浮腫の治療法の1つです。

リンパ浮腫が生じると皮膚が薄くなり、乾燥したり傷ついたりしやすくなります。乾燥によるひび割れや傷口から細菌が侵入し、感染を引き起こすリスクも高まるため注意しましょう。

感染予防には皮膚をしっかりと洗浄し、保湿クリームを塗って乾燥を防ぐことが大切です。指の間や爪のあたりなどの洗いにくい部位も、丁寧に洗浄してください。皮膚が硬くなっている場合は、軟膏やローションを塗りましょう。

圧迫療法

下肢にリンパ浮腫を発症したときは、圧迫療法による治療も有効です。弾性包帯や弾性ストッキングで圧力を加え、リンパ液のうっ滞を防止し、むくみやだるさを改善します。

弾性包帯と弾性ストッキングの特徴は、以下のとおりです。

弾性包帯・患者さんの状態に合わせて圧力を変更できる
・巻き方の習得までに時間がかかる
・圧迫部分が目立つ
・就寝時も装着できる
弾性ストッキング・弾性包帯よりも装着しやすい
・弾性包帯よりも見た目が自然である
・就寝中は基本的に着用しない

弾性ストッキングは通常のストッキングと同じような見た目で、仕事や外出時でも着用しやすいといえます。リンパ浮腫への有効性・着用のしやすさ・履き心地は商品によって異なるため、比較検討して選びましょう。

用手的リンパドレナージ

下肢に発症したリンパ浮腫の保存的治療法の1つは、用手的リンパドレナージです。

用手的リンパドレナージは、専門家がリンパ浮腫のある部位の皮膚をさすり、停滞したリンパ液を適切な場所に誘導する方法です。強い圧力をかけず、やさしくなでるように皮膚に触れることが特徴として挙げられます。

筋肉をほぐしたり、美容目的で受けたりするマッサージとは異なる点に注意してください。

用手的リンパドレナージによる症状改善の効果は一時的であるため、ほかの治療法と組み合わせることがおすすめです。

圧迫下での運動

圧迫下での運動も、下肢にリンパ浮腫を発症したときに有効な治療法です。弾性着衣の着用時に適度な運動で刺激を加えることで、筋肉のポンプ作用によりリンパ液の停滞を改善できます。

おすすめの運動方法は、以下のとおりです。

  • ウォーキング
  • 膝の曲げ伸ばし
  • かかとの上げ下げ

ただし、過度な運動を行うと、血液やリンパ液が増えたり脚の筋肉に疲労が溜まったりして、かえってリンパ浮腫を悪化させる恐れがあります。こまめに体を動かすことを意識し、疲れたら無理せず休みましょう。

手術

圧迫療法や用手的リンパドレナージなどで、下肢のリンパ浮腫の症状が改善しない場合は、手術による治療が必要になる場合もあります。リンパ浮腫の代表的な手術としては、以下の2つが挙げられます。

  • リンパ管静脈吻合術(LVA)
  • リンパ管・リンパ節移植術(VLNT)

リンパ管静脈吻合術は、リンパ管と静脈を細い糸で縫合する手術です。リンパ液の停滞部分より手前のリンパ管を静脈につなぐことで、流れが止まらないようにする方法です。リンパ液の流れる道が確保されるため、リンパ浮腫の症状の改善が期待できます。

正常なリンパ管・リンパ節を採取し、リンパ浮腫のある部位に移植するリンパ管・リンパ節移植術も有効な手術です。

発症後すみやかに適切な手術を受けることで、圧迫療法が不要になった症例もあり、早期にリンパ浮腫に詳しい医療機関へ相談することが推奨されます。

下肢のリンパ浮腫はリンパスリムで治療を

下肢にリンパ浮腫を発症した際は、医療用の弾性ストッキングである「リンパスリム」を使った、圧迫療法での治療がおすすめです。

リンパスリムは、中等度〜重度のリンパ浮腫に効果がある着圧クラスの医療機器です。履きやすく、食い込みや痛みが発生しにくい点にこだわっており、日常生活のなかにリンパ浮腫治療を取り入れやすいでしょう。

ご希望であればオーダーメイドでの着圧・サイズ設計も可能であるため、既製品が体に合わず困っていた方にも選択肢に入れていただけます。自分でできるケアでリンパ浮腫の症状改善・悪化予防を目指したい場合は、ぜひリンパスリムの購入をご検討ください。

リンパスリムの詳細を確認する

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

一般社団法人日本精索静脈瘤協会 理事長
医療法人社団マイクロ会 理事長
銀座リプロ外科 院長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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