
このページの監修医師
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「腟に異物感がある」「午後になると違和感が強くなる」と、子宮脱・骨盤臓器脱に悩んでいませんか。
ペッサリーは体内に挿入して臓器の降下を防ぎ、腟内の圧迫感の原因である骨盤臓器脱の症状を改善する器具です。自身で脱着できるタイプもありますが、さまざまなデメリットも存在します。
本記事では、ペッサリーの特徴や使い方を解説します。ほかの治療手段も紹介するので、「手術したくない」「誰にも知られずに対処したい」という方は、ぜひご一読ください。
目次
ペッサリーとは、子宮脱をはじめとした骨盤臓器脱による不快な症状を軽減するための装具です。
ペッサリーについて、以下のような項目ごとに解説します。
・使用が勧められるケース
・種類
・脱着方法
・費用
・メリット
・デメリット
腟内の圧迫感や排泄障害などでお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
ペッサリーは、子宮脱・骨盤臓器脱になった患者さんによる使用をおすすめします。
骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸などの臓器が下がってきて、腟から体外に出てしまう女性特有の病気です。骨盤臓器脱の主な発症原因は、出産や加齢によって臓器を支える筋肉が衰えることです。
下腹部の違和感や圧迫感が初期症状として挙げられ、午前より午後のほうが症状がひどくなるという特徴もあります。
症状が進行すると、股の間に常に違和感を覚えたり、排泄に難が生じたりします。腟壁と下着が擦れて出血し、痛みで歩行が困難になることもあるため、日常生活に支障をきたすでしょう。
症状の改善や悪化の予防には、ペッサリーの挿入を含む治療を実施することが必要です。
ペッサリーには、主に以下の2タイプがあります。
・臓器を下から支えるタイプ
・スペースを占拠して臓器の脱出を防ぐタイプ
臓器を支えるタイプの例は、日本で主に使用されているリング型と、キノコのような形をしたゲルホーン型です。骨盤臓器脱が重症化した場合は、ドーナツ型やキューブ型のようなスペースを占拠して臓器の下降を防ぐタイプが使用されます。
体の状態に合わせ、担当の医師と相談しながら適切なタイプを選択することが大切です。
▼ ペッサリー装着図
ペッサリーの脱着方法は、以下の2つです。
・定期的に通院して医師に脱着してもらう
・患者さん自身で必要に応じて脱着する
病院では、2〜3ヵ月ごとの受診時に腟内の状態確認と洗浄を行い、ペッサリーを交換します。医療者に管理してもらえる安心感があるものの、自己脱着に比べておりものの増加や悪臭、腟壁への陥入などのリスクが高まる傾向があります。
患者さん自身で脱着する場合は、就寝前の入浴時に外し、起床したら挿入することが基本です。外したあとは、せっけんで洗って乾燥させ、清潔に保ちましょう。排便や性行為の前にも、必要に応じて外せます。
自己脱着の方法は病院で指導を受けられ、慣れないうちはヒモを活用する場合もあります。
自己脱着のほうが病院で行うより通院頻度が少なく済むでしょう。3~6ヵ月に1回ほど通院して腟内の確認・洗浄をします。
ペッサリーを使用した治療を行う場合は、初診・再診料に加え、以下のような費用がかかります。
ペッサリー代 | 2,000〜10,000円ほど |
---|---|
ペッサリー脱着指導料 | 4,000円ほど(病院による) |
基本的には保険適用の対象ですが、ペッサリーの種類によっては自由診療となるため、事前に説明をよく聞きましょう。
保険診療扱いにできる治療は、ペッサリーを挿入した月では2回までです。経過観察を目的とする受診は、1ヵ月に1回しか原則として保険適用されません。
ペッサリーを自身で脱着したい場合は、指導料がかかります。脱着指導料は基本的に保険適用にならないため、費用は病院によって異なる傾向です。
ペッサリーのメリットは、以下のとおりです。
・体への負担が少ない
・慣れれば自分で脱着できる
・手術による治療に切り替えられる
ペッサリーの挿入は体への負担が比較的少なく、持病のような理由で手術を受けられない人にも適します。自分でも脱着でき、通院回数をなるべく減らしたい場合にも治療の選択肢に入れられます。
圧迫感や痛みなどが悪化し、ペッサリーによる治療では症状を抑えられなくなった場合は、手術療法への切り替えが可能です。
ペッサリーには、以下のようなデメリットがあります。
・感染のリスク
・装着による痛み
・腟の違和感
・出血
・おりものの増加
・悪臭
・腟壁のただれやイボ状の盛り上がり
紹介したデメリットが必ず生じるわけではありませんが、ペッサリーによる治療を始める前に医師の説明をよく聞き、リスクを理解することが大切です。正しい使用を心がければ、感染や悪臭などのリスクをある程度抑える効果が期待できます。
人によって腟の形は異なるため、「合うペッサリーがない」という方もいます。ペッサリーによる治療が難しい方は、別の選択肢を検討しましょう。
ペッサリーには、骨盤臓器脱の治療用だけでなく避妊用もあるため、間違えて購入しないように気をつけてください。避妊具としてのペッサリーは、ドーム型のゴム・シリコン製カップで、子宮頸部にかぶせて子宮内へ精子が入ることを防ぎます。
骨盤臓器脱の治療法には、ペッサリーの使用だけでなく、以下の手段もあります。
・骨盤底筋体操
・フェミクッションの使用
・手術療法
骨盤臓器脱は、骨盤の底にある筋肉を鍛えたり、臓器の下降を防いだりすると、症状の改善が期待可能です。重症化した場合は、手術による根本的な治療が推奨されるため、早めの対処をおすすめします。
ペッサリー装着よりも手軽にできる、骨盤臓器脱の治療手段が骨盤底筋体操です。骨盤底筋体操は、以下のような動作で筋肉を鍛える運動です。
1.肛門付近に5秒くらい力を入れる
2.力を緩めてリラックスする
3.1と2の動作を10回繰り返す
1と2の動作は1分間かけて行いましょう。2〜3週間つづければ筋肉が鍛えられ、腟の違和感や排尿・排便障害などの改善が期待できます。立った状態だけでなく、座ったり肘と膝をついたりした姿勢でも行えるため、日常生活のなかで気軽に取り入れられるでしょう。
ただし、お腹に力を入れるといった間違った方法で行うと、症状が悪化する恐れがある点に注意が必要です。
フェミクッションという医療機器の使用は、骨盤臓器脱の症状の改善に有効な治療法です。
腟から脱出した臓器をフェミクッションによって体内に押し戻します。クッションを体内に挿入したり留置したりしないものの、効果がすぐに出て、腹圧がかかっても臓器の脱出を防げます。
「痛みで装着できない」「腹圧ですぐに外れる」といった、ペッサリーに関する悩みを持つ方にも、フェミクッションは有効です。体の中に異物を入れるペッサリーと比べて、感染症のリスクを低く抑えられるメリットもあります。
骨盤臓器脱を根本的に治療したい方には、手術療法がおすすめです。ペッサリーや骨盤底筋体操、フェミクッションで症状を改善できない場合に検討されます。
手術療法の主な種類は、以下のとおりです。
・腟式子宮全摘術+腟壁形成術
・腟閉鎖術
・経腟メッシュ手術
・腹腔鏡下仙骨腟固定術
自身の体の状態に合った術式や、手術の利点・懸念点はそれぞれ異なります。手術を受けるべきかを含め、医師とよく相談のうえ、自分に合った治療方法を取り入れましょう。
骨盤臓器脱の治療法を詳しく知る
フェミクッションの特徴は、体の中に異物を入れずに、膣から脱出した臓器を支えられる点です。三井メディカルジャパンの代表取締役によって開発されました。
フェミクッションはクラスⅠに分類される医療機器です。医療機器は人体への影響度に応じてクラスⅠ〜Ⅳの4段階に分けられ、番号が小さいほどリスクが低いことを意味します。
フェミクッションのメリット・デメリットやおすすめの方、費用を確認しましょう。
フェミクッションは、骨盤臓器脱の患者さんにとって、以下のように多くのメリットがあります。
・自身で簡単に脱着できる
・感染症のリスクが少ない
・装着直後から症状を緩和できる
・ペッサリーや手術が適さない人も使用できる
・下着のようなデザインで他人に疾患を知られにくい
・簡単に洗浄できる
医師の処方箋なしで、ECサイトやドラッグストアなどで購入できる手軽さも、魅力です。
フェミクッションは、体にできる限り負荷をかけずに骨盤臓器脱を治療したい方にもおすすめです。
フェミクッションには、以下のデメリットも存在します。
・健康保険の適用対象とならない
・トイレでの脱着に手間取る患者さんもいる
健康保険が適用されないものの、安全面や治療効果を心配する必要はありません。フェミクッションは、医療機器の安全性を守る独立行政法人である医薬品医療機器総合機構に認められた医療機器です。効果は、多数の臨床試験で証明されています。
脱着時の手間を減らしたい場合、フェミクッションのサポーターを変えることがおすすめです。サポーターには、脱着のしやすさを考えて作られたタイプもあります。
以下の項目に当てはまる方は、ペッサリーよりもフェミクッションがおすすめです。
・ペッサリーが落ちやすい
・手術前でペッサリーを外す必要がある
・基礎疾患があって感染のリスクが高い
・手術を希望しない
・定期的な通院が難しい
・体の中に異物を入れることに怖さがある
フェミクッションは体の外から臓器を押し上げる方式で、取り扱いが比較的簡単です。手軽に導入できるため、ペッサリー・手術療法が合わない方はフェミクッションによる治療を検討してください。
フェミクッションの主な費用(税込)は、以下のとおりです。
初回購入品 | スターターキット | 33,000円 |
---|---|---|
消耗部品 | クッション | 2,750円(1個) |
ホルダー | 2,750円(1枚) | |
使い捨てホルダー | 3,850円(1袋) | |
サポーター | 14,300円(1枚) |
全て洗って繰り返し使えることが大きなメリットです。
全額自己負担ですが、確定申告をすると医療費控除を受けられます。領収書が必要になるため、しっかりと保管しておきましょう。
フェミクッションは、以下の3つで構成される医療機器です。
・クッション
・ホルダー
・サポーター
それぞれのパーツについてわかりやすく解説しているので、フェミクッションの購入を考えている方はぜひチェックしてください。
クッションは、腟口をおさえるパーツです。表面は柔らかく、人体への安全性が確認されているシリコーンゴム100%で作られています。内部にはスポンジが入っており、振動を吸収し、臓器を受け止めます。
クッションの大きさはS・M・Lの3つがあり、腟口や出てきている臓器の大きさ、骨盤臓器脱の症状に合わせて選択可能です。「自分に合ったサイズをきちんと選べるか不安がある」という場合は、提携医療機関の医師と相談して決めるとよいでしょう。
ホルダーは、以下の4層から構成されている、クッションを定位置に留めるパーツです。
・表面層
・吸収層
・防水層
・固定層
少量の尿漏れやおりものを吸収するとともに、クッションの腟内への進入を防ぐ役割もあります。
ホルダーのサイズ展開は1種類で、クッションの大きさに関係なく使用可能です。
ホルダーは、使い捨てか否かを選べます。腟内の圧迫感に加えて尿漏れの症状がある場合は、使い捨てできるホルダーを選択することを推奨します。
サポーターは、下着を着用する感覚で、フェミクッションを固定するパーツです。ベルトを調整し、患者さんの体型に合わせてクッションの腟口への密着度を高めます。
スターターキットでは、以下の4種類からサポーターを選択可能です。
種類 | 素材 | 特徴 |
---|---|---|
ミディー |
ナイロン:86% ポリウレタン:14% |
フックで脱着できて伸縮性が高い |
らくらく |
ナイロン:86% ポリウレタン:14% |
面ファスナーにより脱着がしやすい |
ベルトレス |
ポリエステル:82% ポリウレタン:18% 裏地 コットン:95% ポリウレタン:5% |
ベルトがなく下着により近い |
ミディー (コットン) |
コットン:70% ポリウレタン:30% |
フックで脱着する |
スターターキットでは選べないものの、コットン製のジッパータイプもあります。自分のニーズに合わせ、使いやすいサポーターを選ぶことが大切です。
フェミクッションの使用方法を、以下の3つの場面に分けて解説します。
・装着
・トイレでの脱着
・お手入れ
フェミクッションを使用する際は、感染の原因にならないよう、常に清潔に保つことが重要です。正しい使用方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
フェミクッションは、以下の手順で装着できます。
1.準備
2.装着
3.固定
まずは、クッションをホルダーにセットして準備します。
次に、臓器が膣内に収まっていることを確認したうえで、クッションと腟口に隙間が発生しないようにサポーターを履いてください。慣れるまでは、寝た状態で行うと履きやすくなります。
サポーターを履いたあとは、横ベルトを腰骨に引っかけ、縦ベルトで持ち上げて固定します。横と縦のベルトを調節すれば、日常生活のなかでずれることはありません。
フェミクッション使用時は、サポーターを履いているため、トイレで排尿・排便する際は取り外すことが必要です。ミディータイプの場合は横ベルトを外し、サポーターを下ろして排泄します。
排泄後は、臓器が腟外に出ていなければ、何もせずに再度装着できます。腟から臓器が出ている場合は、必ず体内に収めてから装着してください。腟粘膜や臓器がクッション・サポーターと擦れてしまうと、痛みや出血の原因になる可能性があります。
フェミクッションは、自宅で洗えます。寝ているときに臓器が腟外に出てくることは基本的にないため、1日の終わりには取り外してお手入れをしてください。
ホルダーとサポーターは手洗いしたり、ネットに入れて洗濯したりし、軽く脱水してから乾かします。
クッションは、腟口に当たるパーツなのでキレイさの維持が特に欠かせません。付属の洗浄栓で裏側の穴をふさいでから洗いましょう。
各パーツは消耗部品なので、定期的に交換して清潔を保ってください。
フェミクッションの臨床での効果は、学会発表や論文で多数報告されており、さまざまな骨盤臓器脱の症例で症状改善が見られています。
以下の画像は、フェミクッション装着前後の患者さんのMRI画像です。
出典:Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse|Obstetrics & Gynaecology
上から(a)膀胱瘤(b)子宮脱(c)小腸瘤と直腸瘤(d)完全脱です。
腟口よりも高い位置で臓器が支えられており、脱出を防止できていることがわかるでしょう。多くの患者さんが治療効果を実感しているため、ぜひ導入を検討してください。
骨盤臓器脱を治療したい方には、フェミクッションを推奨します。
フェミクッションは、ペッサリーのように体の中に入れる必要がなく、病院に行かずとも購入可能です。脱着が簡単で、下着と同じような感覚で使用できます。
学会発表や論文で優れた臨床成績が報告されており、十分な治療効果が期待できます。「ペッサリーが合っていない気がする」「手術を避けたい」という方は、フェミクッションの購入を検討してください。
フェミクッションを購入する
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
所属医療機関
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役
三井 桂子
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。
スターターキット ライトネット購入限定
まずは試してみたい
という⽅に!
セット内容
・サポーター1枚(ミディベージュサポーター)
・クッション 3個(S・M・L各サイズ1個)
・布製ホルダー(フリーサイズ3枚)
・洗浄栓
※スターターキット ライトをご選択の方はミディベージュサポーターのみとなります。
スターターキット
普段の⽣活でしっかり
使いたい⽅に!
セット内容
・サポーター1枚(次の項目で種類・サイズを選択ください)
・クッション 6個(S・M・L各サイズ2個)
・布製ホルダー(フリーサイズ3枚)
・洗浄栓
※コットンの特注サイズは現在在庫切れです。