COLUMN

高齢者のペッサリー装着について

高齢者と骨盤臓器脱

骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤など)とは、子宮・膀胱・尿道・小腸・直腸などが、女性器(膣)に下垂し膣外に出てきてしまう病気です。女性は閉経すると女性ホルモンが低下し、骨盤臓器の支持組織が弱くなり、高齢になるほどリスクが高まります。
治療法には外科的手術のほか、ペッサリーの装着やフェミクッションの着用があります。
詳細は、高齢者が子宮脱・骨盤臓器脱に気をつけるべき理由とは?治療法と予防法をご覧ください。

(ペッサリーについては、詳しくはこちらをご覧ください。)

高齢者のペッサリー装着で見られる問題点

力を入れるとペッサリーが抜けてしまう

若い人と比べ、高齢者では骨盤底の支持組織が脆弱になっているため、くしゃみや咳、階段を登ったり、荷物を持ったときなどに腹圧がかかり、それと同時にペッサリーが膣から抜け落ちてしまうことがあります。
その場合は、更に大きなものを入れますが、骨盤底筋が弱くなっているため、サイズを大きくしても外れやすくなります。

尿漏れしやすくなる

骨盤臓器脱の症状のうち、特に子宮脱や膀胱瘤では、尿道も一緒に下垂していることが多く、初期症状では尿漏れがしますが、進行すると尿閉といって尿が出にくい状態になります。しかし、骨盤臓器脱のためにペッサリーを入れると、再び尿漏れしやすくなります。

臭いのきついおりものが出る

ペッサリーを長いこと装着すると、膣粘膜が傷つき、雑菌が繁殖し、膣から悪臭がするようになります。

装着時、違和感や痛みがある

ペッサリーを装着することにより、違和感や痛みを感じることが多くあります。特に外れやすい場合には、大きなサイズのペッサリーが選択されますが、違和感や痛みは増してしまいます。

ペッサリーを入れたことを忘れてしまう

ペッサリーを装着している場合は、定期的な受診が必要になりますが、高齢者の中には、ペッサリーを入れたこと自体を忘れてしまうことがあります。20年経ってある日出血してしまい、病院に行ったらペッサリーが入っていたというケースも多々あります。

高齢者のペッサリー装着で問題が起こる原因

若い人と比べ、高齢者では筋力も低下します。同様に、骨盤底の支持組織も脆弱になっているため、子宮や膀胱、直腸などの周辺臓器を支える力が弱くなります。
軽度の骨盤臓器脱についてはペッサリーの装着をされていますが、腹圧時に外れやすくなると、大き目のペッサリーが選択されるようになります。そしてペッサリーが膣粘膜の同じところにあたるようになります。
膣内で長時間ペッサリーが同じところにあたると、膣粘膜が傷つき炎症が起きたり、膣内に雑菌が繁殖しやすい状態になります。その他、肉芽やびらん、更には瘻孔の原因にもなります。

高齢者における骨盤臓器脱の治療方法

骨盤臓器脱の治療方法としては、主に手術と保存的治療の2種類があります。
ペッサリーの装着は保存的治療の1つです。ここでは、保存的治療のもう1つの手法であるフェミクッションについて解説します。

手術

手術には、従来法をはじめ、メッシュを使ったRSCやLSCやTVMなど様々な方法があります。患者さんの身体の状態や、医師の得意な手術方法により、判断されます。
ロボット支援下で行われるRSCも流行りつつありますが、RSCやLSCは長時間低頭位(頭を低く保つこと)のため、緑内障や動脈瘤がある方は受けることができません。一方、TVM手術は経腟的に行えるので、手術時間が短くすみ、身体への負担が軽いとされています。
TVM手術については、欧米では合併症や後遺症が問題となり禁止されていますが、日本では、日本製のメッシュを用いて安全に行われています。

フェミクッションの活用

手術が難しい場合は、ペッサリー装着とは異なる保存的治療であるフェミクッションの着用がおすすめです。フェミクッションは下着のようなサポーターを着用し、膣部分をクッションで抑えることで、骨盤臓器脱を抑えます。お手洗いや入浴の際、簡単に着脱でき、毎日お洗濯もできるのでペッサリーに比べ衛生的であり、通院の負担もなくなるのが大きなメリットです。

ペッサリーの装着に悩みを感じる方は、一度フェミクッションを活用してみてはいかがでしょうか。

詳細は、当三井メディカルジャパンのフェミクッションについてをご覧ください。

フェミクッションの臨床試験結果

MRI画像は、(a) 膀胱瘤、 (b) 子宮脱、(c) 腸瘤と 直腸瘤、(d) 完全な外反を示し、フェミクッション はすべての患者で会陰の下の半球(点線)として確認され、すべての脱出臓器は、フェミクッションを装着した場合の方が 有意に高い位置に支え、骨盤臓器脱が改善されているのがわかります。

フェミクッションの有効性

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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