COLUMN

サポーター、ペッサリー、リングが痛い…骨盤臓器脱の医療機器には何がある?

骨盤臓器脱の治療方法

骨盤臓器脱の根治治療は手術になります。手術にはいくつかの方法があり、患者様の症状や年齢、体力などから、適切な手術方法を医師が判断します。
持病や合併症などある人は手術が出来ないこともあり、その場合は保存的治療法が有効が選択されます。しかし、近隣に病院がない場合、あるいは専門医が近くにいないなどの理由で、受診できない方も多いのが現状です。
まずは自分でできる保存的治療法を取り入れてみることが、症状を進行させず、日ごろの生活を難なく送る近道です。

手術による治療方法の比較

手術には複数の術式があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

術式 概要 メリット デメリット
子宮摘出術 下がってきた子宮を摘出する方法 子宮がんや子宮筋腫のリスクはなくなる 妊娠できなくなる
膣縫縮術 弱っている膣の壁(筋膜)を縫い縮める方法 簡便に行える 痛んだ組織で形成しているため、再発のリスクがある
従来法(上記2つを同時に行う) 子宮摘出後に膣壁を縫い縮める方法(婦人科で最も多く行われている) 婦人科で最も多く行われていて、低侵襲である 痛んだ組織で形成しているため、再発のリスクがある
経膣メッシュ手術(TVM) 弱っている膣の壁をシート状のメッシュで補強する方法 (授産の可能性がある場合は行わない) ・経腟的に手術をするため開腹せず患者の負担が少ない
・再発のリスクが低い
日本では安全に行われているが、合併症や後遺症が問題となり、現在海外では禁止されている(注)
膣の閉鎖 膣の前と後ろの壁を縫い合わせて、臓器が落ちないようにする方法
寝たきりの人を対象とし健常者には行わない
・経腟的に手術をするため開腹せず患者の負担が少ない 性交ができなくなる
腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC) おなかに数カ所の小さな穴を開ける腹腔鏡下にて、骨盤臓器脱によって下垂した膣を、メッシュを用いて仙骨へ固定する方法(授産の可能性のある若い人にも行える) ・入院期間が短い
・術後の痛みが軽い
・癒着が少ない
・経再発率が最も低い
・子宮摘出を行う
・手術費用が高い
・実施施設が少ない

(注)2019年4月16日 FDAは骨盤臓器脱に対する経腟メッシュ手術に使用する外科用メッシュの2社3製品に対し製造と販売を中止

骨盤臓器脱の治療方法について詳しくはこちらも合わせてご覧ください。

このように、骨盤臓器脱の治療には手術を用いたさまざまな方法があります。
ただし、手術には多大な費用がかかるほか、リスクが伴うこと、出産ができなくなることなど、多くのデメリットもあります。また、持病や合併症などにより、手術を受けられない場合もあります。

ただし、骨盤臓器脱は手術を行わずとも症状を軽減することは可能です。「保存的治療法」と呼ばれています。

保存的治療法について

保存的治療法には「リングペッサリーの装着による治療法」と「骨盤底筋訓練(体操)」、そして「フェミクッションによる治療法(保存的治療法)」があります。
それぞれの治療法には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

術式 概要 メリット デメリット
リングペッサリーの装着による治療法 ドーナツ状の輪を膣の中に入れて、2~3ヶ月毎に病院にて膣洗浄・リング交換を行う ・簡便である
・合併症などで手術を受けられない人にも使える
・定期的な交換が必要
・異物のため、感染のリスク
・膣壁が脆弱なため出血を伴うことがある
・おりもの過多
骨盤底筋訓練(体操) 子宮、膀胱、尿道、小腸、直腸を支える骨盤底筋を鍛える ・立っているとき、座っているとき、家事をしながらでも、人に知られることなく簡単に行える ・症状の進んだ骨盤臓器脱の場合は効果が期待できない
フェミクッション ・装着することにより、臓器を体内に保持する 骨盤臓器脱の不快感から解消され、通常の生活を送る
・クッション、ホルダー、サポーターを用いることにより、症状に合わせた使い方ができる
・病院に行かずに自宅で行える
・履くだけで、脱の違和感から解消される
・手術やリングペッサリーの装着など、これまでの治療法が合わない人にでも使える
・感染症や合併症、びらんなどの心配がない
・健康保険の適用にならない
・着脱で手間取らないよう、使用方法を理解する必要がある

骨盤底筋訓練について

初期の骨盤臓器脱の場合は有効で、症状を改善し進行を抑えることができます。効果には個人差があり、効果が得られるには時間がかかります。しかし症状の進んだ骨盤臓器脱の場合は、臓器が挟まった状態では骨盤底筋体操を行うことがでず、効果も期待できません。この場合は何らかの方法(フェミクッションの装着など)で臓器を体内に収めておく必要があります。

リングペッサリーについて

ペッサリーの種類
リングペッサリーは、膣内にドーナツ状のリングを挿入し、臓器が落ちてこないように支える方法です。
2~3ヶ月に1回、病院にて洗浄・交換を行う必要があります。
ペッサリーについて詳しくはこちらをご覧ください。

近年、様々な形状のものが登場しているので、病院でフィッティングを行いながら、自己脱着をお勧めしている医療機関が増えてきました。しかし、それでも膣内に異物が入ることには変わりがないため、感染のリスクやおりもの過多、出血などが起こる可能性があります。これが、リングペッサリーの欠点です。
また、腹圧がかかるなどで脱落しやすくなると、膣内に留置することが困難になります。この様な場合は、フェミクッションとダブルでの使用を推奨されています。

ペッサリーのサイズ選択

ペッサリーのサイズは、腟中央の横径と腟の長さを考慮して決定します。挿入後に腟壁とペッサリーの間に指が軽く挿入できるぐらいのゆとりが必要です。医療機関でフィッティングが可能ですので相談してみましょう。

サイズは大きすぎると圧迫感や不快感があり、排尿・排便困難にもつながります。小さすぎると自然に外れてしまったり、排尿や排便のときに外れやすくなります。

ペッサリーの着脱

ペッサリー装着図
多くの場合は、数か月に1回通院して医療機関で交換します。医師が診察し、膣内洗浄をし、ペッサリーは新しいものに交換してもらいます。医療機関で管理してもらえるという安心要素はあるものの、異物を体内に入れ続けることになるので感染症や膣内びらんのリスクがあります。また、おりものが増えたり、ニオイが気になったりする人が多いです。

感染などのリスクを回避するために、ペッサリーを自分で着脱できるように指導をする医療機関もあります。一日の終わりなどに自分で外して洗い起床時に挿入することになるので、挿入していない時間ができることで膣粘膜への負担が減ります。また、毎日もしくは週に数回外して洗浄するので衛生的な面でのメリットがあり、感染症などのリスクが軽減できます。しかし、自分で出し入れするのは難しい場合も多いです。

いずれにしても、ペッサリーを使用する場合は、炎症や感染のリスクがゼロではありません。

ペッサリーの痛みと着脱について

ペッサリーを膣内に挿入することで、子宮下垂や骨盤臓器脱の症状をやわらげることが可能です。

しかし、人体からするとペッサリーは異物であるため、挿入時または挿入後に違和感や痛みを訴える方が多くいます。数ヶ月ペッサリーを挿入し続けると膣壁びらんを生じやすくなります。

ペッサリーの着脱には、外来での着脱と自己着脱の方法があります。自己着脱を希望する場合は、自己脱着を推奨している医療機関を受診すれば、方法を教えて貰うことができます。

ご自身で着脱する場合は、最初は難しく感じますが、一度習得すれば比較的誰でも簡単に行えるようになるります。起床時に挿入し、就寝時に抜去すれば、外来での着脱に比べて膣壁びらんも起こりにくいです。初回のペッサリー挿入後は1~2ヶ月後に受診し、その後は半年ごとの受診で問題ありません。

外来での着脱は挿入後1~3ヶ月での受診が必要で、受診時に膣状態の確認や洗浄、ペッサリーの交換を行います。

フェミクッションについて

フェミクッションは、これまでつらい思いをされていた患者様のために、骨盤臓器脱の治療と予防を目的とした、新しい治療法として考えられた医療機器です。
身体に接する部分は、適度な圧力で膣を優しくサポートできるシリコン製の特殊なクッションを使用しています。このクッションのお蔭で有効性と安全性において高い評価を得ています。

フェミクッションとペッサリーの違い

フェミクッションとペッサリーには、以下のような違いがあります。

  • ・どちらも骨盤臓器脱の治療に使える
  • ・フェミクッションは身体の中に入れない
  • ・実際に支給される金額は自己負担の割合によって変わります
    • ・ペッサリーの場合、体内に入れる
  • ・自由に着脱できる
    • ・ペッサリーの場合、着脱には練習が必要
  • ・フェミクッションの場合、すべての女性に安全
  • ・ペッサリーは医師による診察が必要だが、フェミクッションは不要
  • ・ペッサリーは着脱中・前後で感染症や合併症のリスクがあるが、フェミクッションにはほとんどない
  • ・ペッサリーの場合、定期的に通院し、膣洗浄やペッサリーの交換が必要になる

フェミクッションの有効性

フェミクッションの臨床試験の結果を紹介します。下図は、骨盤臓器脱の患者様へフェミクッションを装着する前と、装着した後のMRI画像です。上から、(a) 膀胱瘤、 (b) 子宮脱、(c) 小腸瘤と 直腸瘤、(d) 完全脱 となります。

黄色の点線(半球状)がフェミクッション(FC(+))の位置です。すべての患者様において、フェミクッションの装着によって脱出臓器を高い位置に支え、骨盤臓器脱が改善されているのがわかります。

出典 Nomura Y, Yoshimura Y, et al: Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse. J. Obstet. Gynaecol. Res., 48(5): 1255-1264, 2022

フェミクッションの有効性

骨盤臓器脱とは

骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤など)とは、膣のヘルニアなどとも呼ばれ、子宮・膀胱・尿道・小腸・直腸などが、女性器(膣)に下垂し膣外に出てきてしまう病気です。別名「性器脱」、「膣脱」ともいわれ、古には「なすび」と云われた疾患です。

骨盤内臓器(子宮、膀胱、直腸)は、筋肉、靭帯、筋膜で構成された骨盤底筋によって支えられています。骨盤臓器脱は、それらの組織が弱くなり、膣から骨盤内臓器が1つまたは複数出てきてしまう病気です。
出てくる臓器によって、子宮脱・膀胱瘤・尿道瘤・小腸瘤・直腸瘤と呼ばれていて骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤など)とはその総称です。それらを総称して骨盤臓器脱といいます。
海外ではPelvic Organ Prolapse (POP)の名称を用いられ、日本でも骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤など)という名称が使われるようになりました。

最初は膣から何かが落ちてくるだけですが、進行すると排尿困難や排便困難、性機能障害なども起こるようになります。痛みや出血のため、歩行困難になるなど、著しくQOL(生活の質)を低下させます。

また、恥ずかしさから病院にも行けず、家族や知人にも言えず、人知れず悩んでしまう病気でもあります。

自分でできる対策

骨盤臓器脱の症状が軽い場合や、症状はないけれど予防をしたいという場合には、以下のような対策がおすすめです。

骨盤底筋体操をする

立った状態・座った状態・寝ころんだ状態で行えます。さらに、テレビを見ながら行ったり、料理をしながら行ったりできるので、日常生活に取り入れやすい体操です。
やり方は簡単です。肛門・膣のあたりをギュッと締めて10秒数え、そのあとは力を抜いてリラックスします。これを10回繰り返すだけです。
効果が出るまでには数か月以上必要ですので、根気よく続けましょう。

重いものをなるべく持たない

重いものを持つと腹圧がかかって骨盤底筋を痛めてしまい、骨盤臓器脱のリスクにつながります。どうしてもの時は、膣や肛門のあたりを締めながら重いものを持つこと良いでしょう。

便秘の時にいきまない

肥満体系だと骨盤底に負担がかかりやすくなるので、太り過ぎないように体重管理をすることが大切です。

重いものをなるべく持たない

お手洗いでいきむ行為は、骨盤臓器脱を悪化させてしまいます。日ごろから適度な水分補給をし、繊維質を摂るなど、食事にも気を遣うようにしましょう。

臓器が出てきたら自分で戻す

自分で戻していいの? と衛生面などを不安に思われるかもしれませんが、臓器が出たままの状態にせず、指でやさしく押し戻しましょう。出たままの状態だと、かぶれや感染、血流の悪化、痛みなどの原因になります。

フェミクッションを使用する

骨盤臓器脱の症状を緩和する医療機器ですが、処方箋なしで購入できます。詳しくは後述します。

治療方法はどのように選択すればよい?

骨盤臓器脱の重症度

病院を受診する場合は、手術療法が第一の選択肢となります。そして、持病や合併症のため手術を受けられない場合は、リングペッサリーや装具(サポーター:フェミクッション)などの保存的治療が検討されます。
また、手術設備のないクリニックなどでも、やはりリングペッサリーや装具(サポーター:フェミクッション)などの保存的治療が検討されることとなります。

しかし、誰しもがすぐに医療にアクセスできるとも限りません。近隣に病院がない、田舎のため交通が不便、どこの病院に行ったら良いか情報がない、など様々な理由で、受診までにかなりの時間を有している方も少なくありません。
骨盤臓器脱は、放っておくと進行しやすく、進行してしまうと、生活に支障を来たすこととなります。
まずは保存的治療法など、手軽に入手でき、簡単に行えることを取り入れてみることをお薦めいたします。

フェミクッションは、電話やファックス、インターネットなどでも注文でき、翌日または翌々日には全国どこででも受け取ることができるため、早期の症状緩和や予防が可能です。

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フェミクッションについて詳しくはこちら

 

ペッサリーが「痛い」「合わない」という人も…

リングペッサリーは、膣内に異物を挿入するため、疼痛などの痛みを感じたり、炎症を起こしたりという合併症があります。リングペッサリーには色々なサイズがあるため、膣の状態に合わせ、医師がサイズを選びますが、人によっては、違和感を強く感じたり、便秘を訴える方もいます。また、異物を膣内に留置することにより、膣炎を起こしたり、びらんや肉芽などの合併症なども起こる場合があります。

その他、腹圧がかかると同時に、リングペッサリーが膣から脱出してうこともあります。この様な時は、別のサイズを選びますが、一度脱出してしまうと繰り返してしまい、リングペッサリーでの管理は難しくなることが多いのです。

フェミクッションは、医師による診察を受けなくても入手可能です。必要なときに履くことにより、骨盤臓器脱の不快な症状を和らげることができます。また、体内に挿入するものではないので痛みもなく、また合併症の心配もないため身体に負担がかかりません。

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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