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肥満は子宮脱、骨盤臓器脱になるリスクあり!?その理由と予防について解説

子宮脱や骨盤臓器脱は、女性がかかる疾患のなかでも発症率が高い疾患です。日本では女性の約10人に1人が子宮脱や骨盤臓器脱の症状があるといわれており、その中でも肥満の人は発症するリスクが高い傾向にあります。なぜ肥満が子宮脱や骨盤臓器脱になりやすいのか、その理由と予防について解説します。

子宮脱、骨盤臓器脱とは

子宮脱や直腸瘤、膀胱瘤などを総称して骨盤臓器脱といい、以前は、性器脱と呼ばれていました。骨盤臓器脱とは、骨盤の中にある子宮や直腸、膀胱などの臓器を支える筋肉が緩み臓器が膣から脱出する、つまり臓器が膣の外へ出た状態になってしまう女性特有の疾患です。

子宮脱は骨盤内の子宮を支える靭帯や筋肉(骨盤底筋群)が緩むことで子宮が正常な位置より下がり、子宮の一部または全部が膣から脱出してしまう疾患です。軽度の子宮脱は特に症状はありませんが、症状が進むと歩行時や入浴時、重い荷物を持つなどお腹に力がかかった時に膣から何かが出てくるような感覚を覚えます。

そして子宮が膣から出かけている状態となり、コリコリしたものが外陰部に触れるようになります。横になると症状は緩和されるため、午前中よりも夕方や夜に症状が強くでることも特徴です。これがさらに症状が進行すると、子宮が完全に脱出した状態となります。

恥ずかしさから医療機関の受診をためらう方も多く、痛みや不快感を我慢し症状も進行した状態で受診した結果、最初から手術を勧められるケースもあります。

子宮脱や骨盤臓器脱は早期に医療機関を受診することで手術や保存的治療法など、症状を根治、改善するための選択肢が増えます。少しでも違和感を覚えたときにはすぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

骨盤臓器脱が発症するメカニズム

女性の骨盤には骨盤底筋群という筋肉があり、ハンモックのように骨盤内の臓器を支えています。臓器を支えるのと同時に、骨盤底筋群や括約筋が収縮し尿道や膣、直腸が締まることで尿や便が漏れない仕組みになっており、重要な役割をもつ筋肉群です。

骨盤底筋群が分娩時や加齢、肥満などが原因で損傷を受ける、または緩むことで骨盤臓器脱が発症します。

最初は入浴中や歩行時に股の間にピンポン球のようなものが触れる違和感があり、ときには歩行時に下着などに擦れて痛むこともあります。排尿や排便時に残尿(便)感ですっきりしない、排尿・排便がしづらいなど、排尿障害・排便障害も症状の一つです。

さらに悪化すると骨盤内臓器が膣の外まで脱出してきます。骨盤臓器脱はひとつの臓器だけが落ちてくるだけではなく、複数の臓器が落ちてくることもあります。これが骨盤臓器脱の発症メカニズムです。

肥満が子宮脱、骨盤臓器脱になりやすい理由

子宮脱や骨盤臓器脱は女性なら誰でも発症する可能性があり、原因は肥満だけではありません。また、生活習慣の改善に注意を払っていてもすべての原因を取り除けるものでもありません。

肥満の人は骨盤底筋に重みがかかるため骨盤内の臓器を押し出してしまい、子宮脱や骨盤臓器脱になるリスクが高い傾向にあります。

肥満の方が加齢や分娩経験などで骨盤底筋群に損傷を受けてしまうことで、さらにリスクは高まります。生命にかかわる病気ではありませんが、下がった臓器が靭帯を引っ張ることで痛みを感じる、または股の間に物が挟まったような感覚を覚え、痛みや不快感で日常生活に支障をきたしてしまう疾患です。

子宮脱や骨盤臓器脱にならないよう予防を心掛けましょう。そして違和感を覚えたときは、早い段階で医療機関を受診することをお薦めいたします。

肥満の人ができる、子宮脱、骨盤臓器脱の予防法

肥満の人ができる、子宮脱、骨盤臓器脱の予防法

肥満の人は子宮脱や骨盤臓器脱の予防のために、体重のコントロールが大切です。特に肥満による内臓脂肪の増加は、子宮や膀胱などの臓器を圧迫します。この内臓脂肪による圧迫が子宮脱や骨盤臓器脱のリスクを高めるため、減量を目的とした運動や弱った骨盤底筋群のトレーニング、そして健康的な生活習慣が重要です。

子宮脱や骨盤臓器脱は突然発症するものではなく、長い時間をかけて進行していきます。一度下がってしまった臓器は自然に元に戻ることはなく、治療をしない限りは徐々に症状が悪化していくため、早期予防と治療がとても重要なのです。

すでに子宮脱や骨盤臓器脱になっており、直ぐに受診ができない場合や、さまざまな事情で手術を受けることができない方には、治療と予防を目的とした医療機器(フェミクッション)を使うことも効果的です。

フェミクッションの活用

子宮脱や骨盤臓器脱の根治のためには手術が必要です。しかし、さまざまな事情から手術を受けられない場合は保存的治療法をおこないます。

保存的治療法とは、手術をせずに症状を和らげる方法です。フェミクッション以外では、リングペッサリーを使用する治療法もあります。

リングペッサリーは膣内に挿入して使用するため、個人差はありますが痛みや違和感を訴える方もいます。一方、フェミクッションは膣内に挿入せずに使用することができるため、膣内に異物を挿入することに抵抗がある方や、リングペッサリーで痛みがあり合わなかった方にも安心してお使いいただけます。

リングペッサリーが合わない方、持病などで手術を受けられない方などへ多くの医療機関でフェミクッションが使用されています。

フェミクッションを使用することに年齢制限はなく、幅広い年代の方が使用しています。
フェミクッションは、クッション・ホルダー・サポーターの3つを組み合わせて使います。
膣口に触れるクッションは、安全性の高いシリコーンゴム100%を使用して、優しく臓器を保護します。ホルダーでしっかりとおりものや尿漏れ対策をしていて、腰から腹部にかけてはサポーターでしっかりと押し上げます。

フェミクッションは、装着後すぐに効果を実感することができます。ご自身で簡単に装着できることはもちろん、腹圧がかかったときに臓器が脱出することを防ぐ機能がありスポーツをする方にも適しています。その他、寝たきりや認知症の方にも介助者がサポートすることで問題なく使うことができます。

下のMRI画像は、フェミクッションの有効性を示す臨床試験の結果です。骨盤臓器脱の患者様へフェミクッションを装着する前と装着した後のもので、上から順に(a) 膀胱瘤、 (b) 子宮脱、(c) 腸瘤と 直腸瘤、(d) 完全な外反 の画像となります。

半球状の黄色の点線半球状がフェミクッションの位置です。すべての患者様の骨盤臓器脱において、フェミクッションを装着することで脱出臓器を高い位置に支え、臓器脱が改善されているのがわかります。

出典 Nomura Y, Yoshimura Y, et al: Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse. J. Obstet. Gynaecol. Res., 48(5): 1255-1264, 2022

フェミクッションの有効性

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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