このページの監修医師
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目次
骨盤底筋は骨盤の底を覆うように位置しており、体の前後で言うと恥骨のあたりから坐骨のあたりを底から支えている筋肉です。
中でも更年期というのは、一般的に閉経前後である45〜55歳を指します。この更年期を迎えると、それまで潤沢だった女性ホルモン(エストロゲンや卵巣ホルモン)の分泌が減少してしまいます。
図のように膀胱や子宮、直腸など、大切な臓器を支える重要な役割を担っています。また、排尿や排便をコントロールすることも骨盤底筋の重要な役割のひとつです。
体の左右で言うと、右の座骨結節と左の座骨結節の間にあるのが骨盤底筋です。椅子に座って手のひらを上にしてお尻の下に置くと、硬い骨が手のひらに当たります。その骨が座骨結節で、間に骨盤底筋があります。
骨盤底筋というのは骨盤内臓器を支える筋肉の総称で、肛門挙筋、会陰横筋、球海綿体筋、外肛門括約筋、外尿道括約筋、坐骨海綿体筋などで構成されています。
骨盤底筋がゆるむ原因として、出産や加齢、閉経による女性ホルモンの低下、肥満などが挙げられます。
出産は、骨盤底筋がゆるむ一番の原因と言われています。出産することで骨盤底筋へ大きなダメージを与え、筋肉が大きく伸びきってしまうからです。
産後の体の回復とともに骨盤底筋も徐々にもとに戻りますが、もともと骨盤底筋が衰えている場合は出産により伸びた筋肉が元に戻りにくくなります。よって、高齢出産の場合は骨盤底筋がゆるみやすいと言えます。また、分娩時に会陰切開や鉗子分娩、吸引分娩などの経験がある人、3500グラム以上の赤ちゃんを出産した経験がある人、多産の人も骨盤底筋がゆるみやすい傾向があります。
加齢と閉経による女性ホルモンの低下
加齢も骨盤底筋のゆるみの大きな原因です。加齢によって筋力が衰えることと、閉経前後は女性ホルモンが低下することで、さらにゆるみが深刻化します。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには、筋肉の弾力や張りを保つ働きがありますので、閉経してエストロゲンの分泌量が減ると筋肉がゆるんでしまうというわけです。
骨盤底筋は、下から筋肉で臓器を支えているため、肥満になると重みで筋肉がゆるみやすくなります。常に腹圧が高い状態と言えますので、減量することで改善に向かう場合があります。
他にも、喘息や気管支炎による慢性的な咳や長時間の立ち仕事、重いものを持つ仕事についていることなども影響しており、骨盤底筋がゆるむ原因はさまざまです。
骨盤底筋トレーニングとは、日常生活の中で簡単に取り入れられる骨盤底筋を鍛えるトレーニングで、運動を発見した博士の名前に由来してケーゲル体操とも呼ばれています。
骨盤底筋トレーニングを行うことによって、骨盤底筋のゆるみによる臓器脱の予防や進行を遅らせることができ、軽度の腹圧性尿失禁には症状改善も期待できます。海外では女性の性的満足度の向上にも繋がったという報告もあるようです。
臓器脱は、骨盤底の筋肉や結合組織が弱くなることで、膀胱や子宮、直腸などの臓器が正常な位置から下がる状態を指します。このトレーニングにより、骨盤底筋を強化することで、臓器の支持力が向上し、脱出症状の軽減が期待できます。
また、女性にとって気になる体形の維持にも効果が期待できます。骨盤底筋のゆるみは、ポッコリおなかやヒップラインが垂れてくる原因にもなります。骨盤底筋を鍛えることは、美しいボディラインの維持するためにも有効です。
具体的には、骨盤底筋を意識的に収縮させることで、筋力が増し、血流が改善されます。これにより、筋肉の柔軟性や耐久性が向上し、日常生活における尿漏れや不快感の軽減が見込まれます。また、トレーニングは自宅で簡単に行えるため、患者の生活の質を向上させる手助けにもなります。
さらに、骨盤底筋トレーニングは、心理的な面でも効果があります。自分の体をコントロールできる感覚が得られることで、患者の自信が高まり、ストレスや不安の軽減にも寄与します。したがって、臓器脱患者にとって、骨盤底筋トレーニングは身体的・精神的な健康を支える重要な要素となります。
トレーニングの方法はとても簡単です。骨盤底筋を締めたり緩めたりを繰り返し、筋力を鍛えていきます。まず、おしっこを止めるような感覚で肛門と膣のあたりをギュッと締めた状態を10秒維持します。10秒経ったら、リラックスして骨盤底筋を緩めて10秒待ちます。この締めた状態と、緩めた状態の繰り返しを10セット行うのがお薦めです。
メリットの多い骨盤底筋トレーニングですが、骨盤底筋は一度のトレーニングで鍛えられるわけではなく、通常の筋力トレーニングと同様に毎日の積み重ねが大切です。実際に尿漏れがある方が効果を実感できるまでには数か月かかります。骨盤臓器脱の予防として効果を発揮するためにも継続した取り組みが必要になりますので、根気よく続けることが大切です。
毎日続けるとなると億劫に感じてしまう人が多いかもしれませんが、立っているときでも座っているときでもトレーニングできるので取り組みやすいトレーニングです。家事をしながら、テレビを見ながらなど、何か他のことをしながらでも大丈夫なので、毎日の日課として取り入れてみましょう。
男性にも骨盤底筋トレーニングはおすすめです。男性の場合は、前立腺肥大症が60歳以降で多く発症します。尿漏れの予防や改善に骨盤底筋トレーニングが有効であることは男性も同様です。奥様が閉経したタイミングなどから夫婦一緒にトレーニングに取り組んでみてはいかがでしょうか。
トレーニングを行う際のポイントは、骨盤底筋の場所を意識しながら行うことです。おしっこを我慢するときのように、ギュッと締めてみます。その時の感覚が、骨盤底筋を締める感覚なので覚えておきましょう。
骨盤底筋トレーニングの姿勢にはいくつかのバリエーションがあります。仰向けに寝転がる姿勢、椅子に浅く腰掛ける姿勢、床にうつぶせになって肘をつき手で顔を支える姿勢、または立ったままで軽く足を開く姿勢などです。仰向けの姿勢が最もリラックスしやすい基本の姿勢となっています。
トレーニングの方法を次項でわかりやすく説明しますので、参考にしてください。
では、実際の骨盤底筋トレーニングの方法をご紹介します。
実は、骨盤底筋トレーニングは家にいる間だけでなく、職場で椅子に座っているときなどいつでもおこなっていただけます。
横に寝転がっておこなう場合は、仰向けに寝て、足を肩幅に開き、膝を少し立てます。
椅子に座ったままおこなうときは、椅子に浅く腰掛けます。
立っている状態のときは、つま先立ちになります。
立ったり、座っていたり、寝転がっているときに、骨盤底筋を意識しながら、以下のような動作をおこないます。
これを10回繰り返し、朝晩行うことがお薦めです。
骨盤底筋が重要な働きをしていることは前述のとおりですが、骨盤底筋が弱まると、何が起こるのでしょうか。
骨盤底筋のゆるみによって、身体にはさまざまな不調が出てきます。何かの拍子に尿漏れをする、お風呂で陰部を洗うときに何かが手にあたるという経験はありませんか。このような経験がある場合は、骨盤底筋のゆるみに起因する疾患の症状がすでに現れている可能性があります。
骨盤底筋のゆるみは、尿失禁(尿漏れ)や骨盤臓器脱の原因となるのです。
女性は男性に比べると尿道が直線的で短く、尿漏れしやすい体の構造になっています。くしゃみや咳をしたときに、おしっこが漏れてしまった経験がある人は少なくないでしょう。この尿漏れは、特に出産を経験した多くの女性が悩んでいる「腹圧性尿失禁」という病気で、主に骨盤底筋のゆるみが原因です。骨盤底筋の筋力低下により、おなかに力が入ったときに尿を我慢する筋肉がうまく働かず尿漏れしてしまいます。腹圧性尿失禁は、女性の尿漏れの中でも一番多いタイプで、治療には骨盤底筋トレーニングが主に用いられます。
同じ尿失禁に「切迫性尿失禁」がありますが、切迫性の場合は何かの拍子に尿が漏れるのではなく、急に尿意をもよおすのが腹圧性との大きな違いです。原因として神経の問題が挙げられます。
骨盤臓器脱は、膣から臓器が飛び出てしまう病気です。お風呂で陰部を洗うときに異物感があったり、イスに座るときに何かが中に入る感覚があったりといった自覚症状で気づく患者さんが多いです。骨盤底筋が緩む原因である出産や加齢が大きく関係しています。予防には、骨盤底筋トレーニングが効果的です。骨盤臓器脱については次項を確認してください。
骨盤臓器脱とは?
骨盤臓器脱は、名前から想像すると恐ろしい病気のように思えますが、決して珍しい病気ではなく、昔は「なすび」や「なすびが下がる」などと言われ広く知られていた病気です。昔は農作業や多産が関係して多く発症していたと考えられ、現代では減少傾向にあるものの、現在も多くの方が悩んでいます。
骨盤臓器脱の症状
骨盤臓器脱という名前の通り、膣から子宮や膀胱、直腸などの臓器が脱出する病気です。初期の自覚症状としては、お風呂で陰部に触ると何かヌルっとしたものが手に触れたり、イスに座るときに何かが中に入る感じがしたりします。夕方になると不快感や異物感が強くなるのも特徴です。
症状が進むと、排尿障害や排泄障害、性交障害が出てきます。さらに、疼痛や出血を伴って歩行が困難になるなど日常生活に大きな支障をきたします。
骨盤臓器脱の治療
骨盤臓器脱を根治するためには手術が必要になります。しかし、手術には体の状態や年齢、臓器脱の状態を考慮する必要があり「フェミクッション」や「リングペッサリー」を用いた保存的治療法も多く行われています。
初期の場合は骨盤底筋トレーニングをおすすめしますが、リングペッサリーを装着している場合は膣内が広がってしまっているので、トレーニングをするには適していません。例外として、リングペッサリーの自己脱着ができる患者さんの場合、リングペッサリーを外した状態での骨盤底筋トレーニングは有用です。
骨盤臓器脱は、自分で違和感を持ちながらも誰にも相談できず、恥ずかしさから受診に至るまで時間がかかりがちです。違和感があれば早めに受診することをおすすめします。
骨盤底筋トレーニングは、骨盤臓器脱の予防や体形の維持にも効果が期待できる体操です。是非症状がないうちからトレーニングを習慣づけて、健康で美しい体を維持しましょう。
骨盤臓器脱の症状でお悩みの方には、身体的に負担の少ないフェミクッションがおすすめです。
フェミクッションは、骨盤臓器脱の予防や症状の改善を目的として開発され、必要なときに症状に合わせて手軽に使える新しい医療機器です。子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・小腸瘤などすべての骨盤臓器脱に使用できます。
これまでの骨盤臓器脱の治療やリングペッサリーなどが適さない方、手術が受けられない方、通院が難しい方などにもおすすめの治療です。体内に異物を挿入しないため、感染症のリスクが減少します。
骨盤臓器脱用に独自開発されたクッション・ホルダー・サポーターを組み合わせて使用し、ご自身で簡単に着脱可能です。臓器を膣内に戻し、外部から臓器をクッションでやさしく押し上げ、ホルダーとサポーターで状態をキープします。
また、フェミクッションは他人から気づかれないように配慮された下着のようなデザインで、繰り返し洗濯できるため衛生的です。
装着直後から出血や痛み、違和感などの症状を緩和でき、腹圧がかかるような場面でも臓器の脱出を抑えます。精神的にも身体的にも負担が少ない特殊なクッションを使うことで、骨盤臓器脱の治療と予防をしながら通常の生活を送ることができます。
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
所属医療機関
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役
三井 桂子
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。
スターターキット ライトネット購入限定
まずは試してみたい
という⽅に!
セット内容
・サポーター1枚(ミディベージュサポーター)
・クッション 3個(S・M・L各サイズ1個)
・布製ホルダー(フリーサイズ3枚)
・洗浄栓
※スターターキット ライトをご選択の方はミディベージュサポーターのみとなります。
スターターキット
普段の⽣活でしっかり
使いたい⽅に!
セット内容
・サポーター1枚(次の項目で種類・サイズを選択ください)
・クッション 6個(S・M・L各サイズ2個)
・布製ホルダー(フリーサイズ3枚)
・洗浄栓
※コットンの特注サイズは現在在庫切れです。