COLUMN

骨盤底筋を鍛えると便秘も改善する?骨盤底筋の鍛え方と便秘の予防

便秘と骨盤底筋は関係があることをご存じですか? 食生活や生活習慣が便秘の原因になることは一般的に知られていますが、排便には骨盤底筋の働きが欠かせないということをご存じの方は少ないのではないでしょうか。

骨盤底筋を鍛えると、排便時の肛門や腸の働きがスムーズになり便秘の解消に役立つのです。この記事では便秘のメカニズムから骨盤底筋との関係性、便秘の改善方法をご紹介します。便秘の症状に悩んでいる方は参考にしてください。

便秘とは?

便秘の自覚症状がある方の多くは、一時的ではなく慢性的に便秘の症状を抱えています。

日本内科学会では便秘の定義を「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」と定義しています。

慢性的な便秘が続いている場合、排便がない状態に慣れてしまうため、便秘をつらいと感じにくいかもしれません。便秘の状態を当たり前と思わず、改善することが大切です。

便は食物から栄養や水分を吸収したあとのカスなので、体から排出されないと毒素として腸に停滞します。

便秘が続くと便が固くなり、排便時に肛門を傷つけてしまうため、血便が出たり痔になったりする原因になります。また、いきんで腹圧をかけることで骨盤臓器脱の原因にもなります。便秘は排便が少ない状態だけが問題なのではありません。他の症状を誘発する危険性があるため、早めに改善する必要があります。

自身の健康を保つためにも便秘を解消するよう心がけましょう。

骨盤底筋とは?

骨盤底筋とは、膀胱や直腸などの臓器を支える骨盤底部の筋肉群です。

骨盤底筋は主に3つの層からできており、内臓を固定したり排泄を促したりする役割を担っています。

【骨盤底筋の構造】

表層:会陰膜
中間層:骨盤隔膜
深層:内骨盤筋膜

骨盤底筋には骨盤内にある内臓を正しい位置に固定する役割があり、ゆるむと臓器脱の症状が表れ、違和感を覚えたり、膣口から臓器が出てきてしまったりします。

また、排泄時に筋肉をコントロールしているのも骨盤底筋です。骨盤底筋がゆるむと尿もれの症状を引き起こします。骨盤底筋は、体がうまく機能するために欠かせない筋肉なのです。

骨盤底筋のゆるみは加齢や妊娠・出産、運動不足が原因です。経腟出産の経験者は特にゆるみやすくなっていますので、対策を取るようにしましょう。

便秘と骨盤底筋の関係

骨盤底筋は膣や尿道口、肛門を動かすときにも使う筋肉です。骨盤底筋を締めたりゆるめたりして排便をコントロールしているのです。

そのため、骨盤底筋が弱って十分に機能しないと、排便に支障が出ます。排便時に無意識に骨盤底筋を締めることで、直腸と肛門がまっすぐになり、便がスムーズに排出できるのです。骨盤底筋をゆるめたり締めたりする機能の改善は、便秘の改善につながります。

また、便秘が原因で腸内環境が悪化し、骨盤底筋に悪影響を与えることもあります。

骨盤底筋を鍛えることは、臓器脱の予防のみでなく、便秘の改善にもつながるでしょう。

骨盤底筋の鍛え方

骨盤底筋は鍛えると強くなります。ゆるみを感じたら積極的にトレーニングをしましょう。

トレーニングは家事の合間や就寝前など、すきま時間に行うと精神的な負担も少ないためおすすめです。自身が取り組みやすい方法を見つけてください。

【あおむけでトレーニング】

あおむけでトレーニング
  1. あおむけになって足を肩幅に開きます
  2. 膝を立て、全身をリラックスさせましょう
  3. 膣や肛門、尿道に力をこめ、5秒ほど維持します
  4. 力を抜きリラックスしましょう
  5. 「力を入れる」「力を抜く」を交互に繰り返します

 

【テーブルを使ったトレーニング】

テーブルを使ったトレーニング
  1. 腰の高さのテーブルのそばに立ちます
  2. 両手と両足を肩幅に広げ、
    体重をのせながらテーブルに手をつきます
  3. 姿勢を保ちながら5秒ほど膣や肛門、
    尿道に力をこめ引き締めます
  4. 力を抜きリラックスしましょう
  5. 「力を入れる」「力を抜く」を交互に繰り返します

 

【座って行うトレーニング】

座って行うトレーニング
  1. 椅子に座って姿勢を正します
  2. 足を肩幅に開き、リラックスします
  3. 肛門や膣を意識しながら締めたりゆるめたりを繰り返します

 

便秘改善のための食事や生活習慣の見直し

便秘を改善するためには、骨盤底筋のトレーニングだけではなく食事の見直しや生活習慣の改善が欠かせません。排便がスムーズになる食事や生活習慣を紹介します。

【便秘に効く食事の工夫】

食物繊維を積極的に摂取する

食物繊維は水を含むと柔らかくなるため、便をスムーズに排出できるようになります。また、腸内環境を整える役割もあるため、排便リズムを整えるといわれています。

食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。2つの食物繊維をバランスよく摂取すると、より便秘に効果的です。

水溶性食物繊維(水に溶けやすい食物繊維)を含む食べ物
海藻類・果物・イモ類

不溶性食物繊維(水に溶けづらい食物繊維)を含む食べ物
豆類・根菜類・きのこ類・雑穀

食事を用意する際は食物繊維のバランスも意識しながらメニューを決めるとよいでしょう。

発酵食品は腸内環境を整える

発酵食品を摂取すると腸内が酸性になります。その結果善玉菌が増えるため、腸内環境が整います。

便秘が気になったら次の食品を積極的に摂るように心がけましょう。

ヨーグルト
納豆
チーズ
みそ
キムチ

ヨーグルトや納豆、チーズなどは普段の食事に加えて摂取しやすい食品です。冷蔵庫にストックしておくと食事に取り入れやすいでしょう。

ビフィズス菌を増やして腸内のバランスを整える

ビフィズス菌は腸内環境を整えるのに役立ちます。発酵食品であるヨーグルトや納豆にも含まれていますが、他にもビフィズス菌が含まれている食べ物があるので意識して摂取するとよいでしょう。

バナナ
玉ねぎ
ごぼう など

また、乳酸菌飲料にもビフィズス菌が含まれます。1日1本など飲む量を決めて取り入れるようにしましょう。

【便秘を改善する生活習慣】

生活習慣も排便リズムに大きく影響します。特に不規則な生活や水分をあまり摂らない生活は腸内環境に響きやすいため、改善するようにしましょう。

まず、就寝や食事の時間を決め、生活が不規則にならないよう注意します。体のリズムが整うことで腸の働きが活性化するのです。

水分を積極的に摂ることも大切です。朝起きたらコップ1杯の水を飲むようにし、1日に1.5リットル以上を目安にこまめに水分補給をします。

また、ストレスも便秘の原因です。ストレスは腸の働きを鈍くします。自身に合ったリフレッシュ方法を見つけてこまめにストレスを発散するとよいでしょう。適度な運動も有効です。

便秘改善に役立つお薬やサプリメント

便秘改善に役立つお薬やサプリメント

便秘を改善するために薬やサプリメントを服用するのも1つの手です。酸化マグネシウムやカルメロースなどは、病院で処方される薬の中では効き方がゆるやかで、体の負担が少ないのが特徴です。自然に近い排便を望んでいる方は病院で薬を処方してもらいましょう。

便秘薬や整腸剤を長期間服用すると、副作用に注意が必要な場合があります。服用の際には用法や用量、注意事項を守り、正しく服用してください。

また、便秘の改善にサプリメントを取り入れる方法もあります。プロバイオテクスや乳酸菌、オリゴ糖などのサプリメントが便秘に有効ですが、過剰摂取にならないよう適量を守る必要があります。

薬剤やサプリメントは、医師の指導を受けながら使用するとよいでしょう。

骨盤底筋を意識したトイレの使い方

骨盤底筋を意識しながら排便をする方は少ないと思います。しかし、正しい姿勢や力の入れ方を知って実践すると、便秘の改善につながるかもしれません。紹介する排便の方法を、ぜひ実践してみてください。

  1. 便意を感じたら、ゆっくりとトイレに座る
  2. 背筋を伸ばし、膝を立てる
  3. 深く息を吸い込み、腹筋をゆるめながら、骨盤底筋をゆっくりと締め上げて排便する
  4. 拭くときは、前方から後方に向かって拭き取る

 
便秘の方は、長い間トイレにこもってしまうことがありますが、改善のためには10分以内が良いと言われています。長時間トイレに座らず、10分を目安に排便を済ませるようにしましょう。

フェミクッションの活用

フェミクッションとは、クッション・ホルダー・サポーターを組み合わせて使う、骨盤臓器脱の方のための医療機器です。骨盤周りをサポーターで固定し、膣口のクッションでは臓器の脱出をやさしく受け止め、臓器の脱出を防ぎます。

フェミクッションは骨盤臓器脱の症状を緩和するだけでなく、骨盤底筋のゆるみもサポートします。結果として骨盤底筋のゆるみからくる尿もれや便秘などの症状の改善も期待できるでしょう。

サポーターは下着のように見える作りで日常生活を邪魔しません。着用後の運動も可能なので、体を動かす習慣がある方にもストレスなく使っていただけます。

また、クッションやホルダー、サポーターは繰り返し洗って使えるため経済的です。ホルダーとサポーターはネットに入れて洗濯機で洗えます。

加齢や妊娠・出産、運動不足が引き起こす骨盤底筋のゆるみは、多くの人に起こりえる症状です。骨盤底筋のゆるみは、骨盤臓器脱につながります。

フェミクッションは、骨盤臓器脱のつらい症状で悩む患者様のための商品で、三井メディカルジャパン(旧女性医療研究所)が開発しました。発売以来、多くの医療機関で採用され、多くの患者様から「症状がやわらいだ」「安心して過ごせるようになった」などの喜びのお言葉をいただいています。

体内に異物を挿入することはないので、ペッサリーの使用で懸念される感染症などのリスクなどの心配はほとんどありません。

骨盤底筋のゆるみを感じたらフェミクッションの使用も検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

骨盤底筋と便秘は大いに関係があります。食事や生活習慣を見直しにくわえ、骨盤底筋を鍛えてみてください。

血便や痔など、他の症状を誘発しないためにも、慢性的な便秘は、放置せずに改善できるよう対策することをおすすめします。

便秘で医療機関を受診してもかまいません。

便秘によってトイレでいきむことは骨盤臓器脱発症のリスクを高めたり、臓器脱の症状を悪化させたりします。

骨盤臓器脱で悩んでいる方にとっても、そうでない方にとっても、便秘を改善することは健康な身体でいるために大切なことなのです。

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

コラム一覧

この記事を見た人はこんな記事も見ています

膣に何かが挟まっているような感覚や下腹部の違和感、尿漏れなどの初期症状から、次第に臓器が膣外に飛び出してきてし […]

続きを読む

便秘の原因の1つとして、骨盤底筋群の硬さが注目されています。 骨盤底筋群とは、膀胱・直腸・子宮などの臓器が重力 […]

続きを読む

喘息や気管支炎などで慢性的に出てしまう咳ですが、この咳が原因で骨盤臓器脱が発症してしまう場合があります。骨盤臓 […]

続きを読む
フェミクッション

FREE
VIEW