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人工尿道括約筋手術を検討する前に:Xホールドとの比較

前立腺がん手術による合併症では「尿もれ」「性機能障害」などが起こり得ます。尿もれに関しては、人工尿道括約筋手術を行うことで改善されることが多いですが、全身麻酔を伴う大きな手術になることなどから、ためらう方も少なくありません。ここでは、人工尿道括約筋手術と、手術の必要のない医療機器「Xホールド」との違いをご紹介しています。

前立腺がん手術後の合併症について

前立腺がんの手術では、前立腺の全摘出が行われます。前立腺は膀胱や尿道括約筋と隣接しているため、手術の際、神経に傷がつくことで、周辺臓器に影響を及ぼすことがあります。これが合併症です。

特に尿もれは生活に影響を及ぼすため、手術によって人工の尿道括約筋を埋め込んで改善する方法があります(人工括約筋手術)。

人工尿道括約筋手術について

手術では、人工の尿道括約筋を埋め込みます。器具は3つのパーツに分かれていて、尿道を圧迫させる装置、液体を貯めておくタンク、尿道括約筋を動かすスイッチがあります。スイッチは陰のう部分にあり、排尿の時に動作させます。手術後2ヶ月間程度は器具をなじませるためそのままにする必要があり、その期間は尿もれが起こります。

メリット

一番のメリットは改善率です。人工尿道括約筋手術を行うことで、手術後の尿もれは大きく改善されます。一部の調査では、90%近い改善率があるとの結果も報告されています。尿もれの改善には他にも「スリング手術」と呼ばれるものがありますが、これらは軽度の尿もれに行われるもので、重度の方にとっては適用になりにくい手術法です。

デメリット

デメリットとしては、全身麻酔が必要な手術であるということです。この手術は前立腺全摘出の手術後1年以内に行われることが多いですが、このような大掛かりな手術を1年間に複数回行うことに、抵抗感を感じる方もいらっしゃいます。
また、この手術自体にも患部への細菌感染や尿道のびらんなど、合併症の可能性があるため、メリットとリスクを天秤に掛けたとき、手術がベストな選択肢ではないケースもあります。

手術を行わずに尿もれを軽減させるためには、医療機器(Xホールド)の利用が有効な場合があります。

Xホールドについて

Xホールドは、前立腺の全摘出後の合併症である尿もれを防ぎ、排尿をコントロールできる医療機器です。手術の必要がなく、届いてからすぐに利用できます。
Xホールドについて詳しくはこちらをご参照ください。

前立腺全摘出の合併症による尿もれは、手術によって尿道括約筋や骨盤底筋の収縮機能が衰えてしまうことで起こります。骨盤底筋が衰えることで膀胱頸部が下垂してしまい、尿をコントロールする力が弱くなってしまいます。

Xホールドは、独自開発のクッションが会陰部分をしっかり支えます。これにより、膀胱頸部の下垂が防がれ、排尿をコントロールします。

メリット

一番のメリットは手軽である点です。人工尿道括約筋手術と比較して、手術や入院の必要がないため、日常生活を送りながら尿もれと向き合うことができます。

下着の上から履くタイプで、洋服の外に響かないデザインになっているため、身体に負担を掛けず、いつもどおりの生活を送っていただけます。

デメリット

手術と違って完治するわけではないため、症状が出ている間は装着をする必要があります。また、非常に簡単な使い心地ではあるものの、腰ベルトや股下ベルトを排尿や排便のたびに装着する手間があります。

人工尿道括約筋手術とXホールドの比較

比較項目 人工尿道括約筋手術 Xホールド
費用 約40万円(3割負担)室料・食事代別 1万5千円(税別)
入院の有無 〜1週間程度の入院 なし
全身麻酔・手術 あり なし
合併症 創部感染・尿道びらん・器械の故障・尿失禁の再発 なし
日常生活への影響 排尿時に機械の操作 排尿時・排便時に器具の脱着
Xホールド自体の手入れ
成績 改善率90% 改善(パッド1枚との併用)

 

根拠
一般的な患者様の負担額(室料、食事代別) ・一般健康保険(3割)387,450円
・老人健康保険(3割)90,345円
・老人健康保険(1割)44,400円
一般的な入院日数
・約5日間程度
一般的な麻酔方法
・硬膜外麻酔または脊髄麻酔による下半身麻酔
注意:上記は一般的な経過をたどった場合の例であり患者様の状態により変更することがございます。

K823-5 人工尿道括約筋植込・置換術

  1. K823-5 人工尿道括約筋植込・置換術
  2. 23,920点

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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