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子宮脱の初期症状とは?もしかして…と思ったら

最近、子宮に違和感がある、妊娠や出産を経てから下腹部が何かおかしい…など、誰にも相談できず悩んだり、不快な思いをしていたりする女性、その症状はもしかしたら子宮脱かもしれません。ここでは、子宮脱という疾患の初期症状についてご紹介しています。

子宮下垂の定義

子宮下垂とは、子宮が膣内で正常な位置よりも下がっており、膣外には脱出していない状態を示します。具体的には、子宮腟部が左右の坐骨棘(ざこつきょく)を結ぶ線より下降していて、脱出せず膣内に収まっている場合が子宮下垂です。坐骨棘とは、骨盤を構成する坐骨の、内側に窪みがある部分です。

子宮下垂が進行して、子宮の一部や全部が膣外に脱出している状態は、子宮脱といいます。

子宮下垂の有病率

子宮下垂が進行した子宮脱の有病率は、ある研究結果では一般女性の14%とされています。子宮下垂は、自覚症状がない場合が多く受診しない患者様が多い疾患です。有病率の把握が難しいですが、子宮脱の前段階である子宮下垂の女性は、子宮脱の14%よりも多くいると考えられます。

子宮脱とは?

子宮脱とは、骨盤臓器脱と呼ばれる疾患の一部で、子宮下垂とも呼ばれます。子宮が下がってくる(下垂する)のが代表的な症状です。骨盤底筋という子宮を支える筋肉がさまざまな要因で弱って、支えきれなくなってしまうことが原因です。

子宮脱の詳しい症状や原因について詳しくは「子宮下垂・子宮脱とは?症状や治療法:中高年を中心に起こる病気」をご覧ください。

子宮脱の4段階の重症度

  • 第1度:子宮が膣に落ちます。膣の入り口から1㎝まで近づいてる状態です。(子宮下垂)
  • 第2度:子宮が膣口のすぐ内側のレベルまで下がります。排尿障害を引き起こします。
  • 第3度:子宮が膣外へ突き出してきます。
  • 第4度:子宮全体が膣外に完全に出てきている状態です。

 

部分的な子宮脱の状態

 

完全に子宮が脱出した状態

初期症状がない人もいる…?

子宮脱・子宮下垂の程度にもよりますが、初期では無症状の場合がほとんどです。また、婦人科検診などで指摘され、初めて気付く場合もあります。

どんな自覚症状で気づく?

子宮が下垂することにより、靭帯が引っ張られることにより、下腹部痛を感じることもあります。
進行すると、お腹に圧がかかった時に「何かが出てくる感じ」がします。立ち仕事をしているとき、重い物を持ったとき、歩いているとき、しゃがんだときです。
そして入浴時に外陰部を洗っているときに、「何かコリコリしたものに触れる」感じがします。これは膣から、子宮頚部が出ている状態です。

更に病状が進行すると、子宮全体が膣壁とともに下がり、膀胱や直腸などの周辺臓器も一緒に下がってきてしまいます。そして、「股の間に何かが挟まっている感じ」がしたり、「座ると何かが中に入り、立つと何かが出てくる感じがする」と、不快感が増してしまいます。更には、下着との摩擦で痛みや出血が起きたり、おりものが増え、赤くなったり、化膿したりします。トイレに行っても排便できない、排尿ができない、または漏れるなどの症状も出現し、生活の質を著しく低下させます。

初期症状を感じたら、何科に行けば良い?

子宮や膀胱、小腸や大腸などが出てくるため、診療科は複数の科に渡っていましたが、近年、「婦人科」と「泌尿器科」を組み合わせた「ウロギネコロジー」という専門科も増えてきています。これは、女性の骨盤底に関する疾患(骨盤臓器脱、女性の尿漏れなど)を専門に診て貰える科です。

症状を感じたら、進行する前に、ウロギネコロジーや女性泌尿器科などの専門外来を受診することをお薦めいたします。

初期症状を感じたら、何科に行けば良い?

その初期症状、もしかしたら子宮脱以外の病気かも

出血、おりものの増加、かゆみ、痛み、排尿痛、尿意切迫感、残尿感などの症状は子宮脱以外の病気の可能性もあります。子宮のがん、カンジダ症、膀胱炎、その他の感染症でも同じような症状を感じる場合があるので、おかしいなと思ったら、早めの受診を心がけるようにしてください。

子宮脱の原因とは?

子宮脱の原因とは?

骨盤の中には子宮・膀胱・直腸といった臓器を支える筋肉(骨盤底筋)があり、腹圧によって骨盤の外に臓器が出ないようにしています。子宮脱が起こってしまうのは、この骨盤底筋がゆるみ、子宮や膣が下垂することが原因です。

骨盤底筋がゆるむ原因はさまざまで、主に以下が挙げられます。

  • ●出産
    ●加齢・閉経
    ●肥満
    ●排便時にいきむ習慣(便秘)
    ●虚弱体質
    ●慢性的な咳(気管支炎や喘息)
    ●長時間の立ち仕事
    ●重い物を持つ仕事
    ●骨盤内の手術経験

とくに多い原因は、出産です。子宮脱を発症する人の多くが出産を経験しており、帝王切開ではなく自然分娩の回数が多いほど起こりやすいといわれています。ただ、分娩後にすぐ子宮脱になることは稀で、閉経を迎える60代ころから発症する方が多いようです。

加齢・閉経後に子宮脱が起こりやすいのは、女性ホルモンの減少に伴い、じん帯や骨盤底筋などの支持組織が弱まるからです。

その他、肥満体型や慢性的な便秘・咳・重い荷物を持つ仕事などは、日常的に腹圧がかかりやすく、子宮脱になりやすいといわれています。

子宮脱の予防と治療法

子宮脱の予防

子宮脱の予防として効果が期待できるのは、主に以下の4つです。

  • ●無理な出産をしない
    ●骨盤底筋を鍛える
    ●肥満に気を付ける
    ●便秘を改善する

無理な出産をしない
高齢出産や多産、難産は子宮脱を発症しやすいので、無理に自然分娩にこだわらず、帝王切開を選択するのも手です。帝王切開で分娩した方は、自然分娩に比べて子宮脱のリスクが低いといわれています。

骨盤底筋を鍛える
子宮脱は骨盤底筋のゆるみや損傷が原因なので、骨盤底筋を鍛えるのが予防につながります。ただ、子宮脱を発症してから鍛えても元に戻すのは難しいため、早めに取り組み継続するのが大事です。

肥満に気を付ける
肥満で内臓脂肪が増加すると、それが子宮や膀胱などの臓器を腹腔内部から圧迫して、子宮脱を招きます。過食せずバランスの良い食生活を心がけ、適度な運動を取り入れることで、日頃から肥満を防止しましょう。

便秘を改善・予防する
便秘で排便時に強くいきむ習慣は、腹圧がかかることで子宮脱のリスクを高めます。こまめに水分をとる・食物繊維が多いものを食べる・適度に運動する、といった習慣が、便秘の改善・予防に効果的です。慢性的な便秘で悩んでいて、なかなか改善しない方は、放置せずに消化器内科などへ出向いて相談してみましょう。

子宮脱の治療法

子宮脱の治療法は、症状の程度によって異なります。

【軽度の場合】
軽度であれば、ゆるんだ骨盤底筋を強くする訓練(トレーニング)や、肥満・便秘などの改善でよくなることがあります。

【子宮が脱出している場合】
子宮などが一部、もしくは完全に脱出している場合は、以下の治療が行われます。

・ペッサリー療法
膣内にペッサリーという器具を挿入することで、子宮の位置を骨盤内に戻し、下垂を防ぎます。膣内に異物を入れるということもあり、膣炎やおりものの増加、出血といった症状が起こることがあるため、定期的に医療機関へ通院し、適切に管理しなければなりません。ペッサリーによる合併症を防ぐために、ペッサリーは定期的な交換が必要です。

・手術療法
根本的な改善には、手術療法が用いられます。脱出した子宮を膣から切除してゆるんだ部分(膀胱や直腸の壁)を縫い縮める手術、人工素材であるメッシュを使用して膣壁を補強する手術、膣を閉鎖する手術など、複数の選択肢があります。

子宮脱・骨盤臓器脱の医療機器フェミクッション

フェミクッションとは、骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤など)の予防・治療を目的に作られた、新しい医療機器です。

「リングペッサリーが合わない」「持病などで手術を受けられない」「なかなか通院できない」といった方に適しています。

フェミクッションは、脱出した臓器が膣内に戻っている状態で膣口をクッションで抑え、ホルダーとサポーターで押し上げることで支える仕組みです。必要なときにご自身で装着できます。

症状がすぐ和らぐうえに、腹圧がかかっても臓器が下垂しにくく、繰り返し洗って使用できるのがうれしいポイント。下着のように見えるデザインにこだわっているので、他人から見られても、医療機器だと気づかれにくいでしょう。

フェミクッションの臨床試験結果からみる有効性

下図のMRI画像は、フェミクッションを装着する前と、装着した後の骨盤臓器脱の患者様のものです。上から、(a) 膀胱瘤、 (b) 子宮脱、(c) 小腸瘤と 直腸瘤、(d) 完全脱 となります。

フェミクッション(FC(+))の位置は黄色の点線(半球状)が表しています。子宮脱の患者様を含むすべてにおいて、脱出臓器が高い位置に支えられ、装着により骨盤臓器脱が改善されているのがわかります。

出典 Nomura Y, Yoshimura Y, et al: Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse. J. Obstet. Gynaecol. Res., 48(5): 1255-1264, 2022

フェミクッションの有効性

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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