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子宮下垂・子宮脱とは?初期症状や治療法:中高年を中心に起こる病気

子宮下垂・子宮脱とは

子宮脱(子宮下垂とも言います)とは、骨盤底の筋肉と靭帯が伸びて弱まり、子宮の正常な支持が失われると膣へ下垂し、症状がひどくなると膣外へ脱出します。骨盤臓器脱の疾患の一つです。
子宮は通常、骨盤内のさまざまな筋肉、組織、靭帯で固定されています。妊娠、出産により、一部の女性ではこれらの筋肉が衰弱します。また、加齢に伴いホルモンエストロゲンが失われることなどにより引き起こされます。
子宮脱は、女性であれば誰しもがかかる可能性があります。特に、1回以上の経腟分娩を経験した閉経後の女性はリスクが高くなります。
軽度の子宮脱は治療を必要としませんが、子宮脱により不快感が生じたり、通常の生活が妨げられたりした場合は、治療をする必要があります。
 
このページでは、子宮脱の症状や原因、治療方法についてご紹介しています。

子宮脱の原因

骨盤内臓器は、骨盤底にある骨盤底筋群と呼ばれる筋肉や靭帯が支えています。子宮脱は、以下のような条件により、骨盤底筋の損傷が起こる事で、症状を引き起こします。

子宮脱

  • 妊娠と出産
  • 肥満
  • 加齢
  • 閉経(エストロゲン低下)
  • 便秘
  • 慢性的な関(気管支炎や喘息
  • 長時間の立ち仕事
  • 重い物を持つ仕事に就いている

 
この様に原因は様々ですが、特に妊娠と出産大きなリスクとなっています。
 
妊娠と出産時の骨盤臓器脱へのリスク

  • 経腟分娩
  • 難産
  • 3500グラム以上の大きな赤ちゃんを出産
  • 多産、高齢出産
  • 会陰切開
  • 鉗子分娩
  • 吸引分娩
  • 妊娠中の喫煙

 
子宮脱と妊娠・出産の関連について詳しくはこちら

放置するとどうなるの?

治療せずに放置していると、症状は更に悪化します。最初は少しの違和感でも、だんだんと強くなってきます。そのまま放置してしまうと、排尿困難や、膣壁に摩擦が生じたり出血したりと、感染症の原因になることもあります。

何もしないでいると悪化するため、正しい方法で治療や処置をする必要があります。

病院に行きたくても行けない人が多い

子宮脱の症状を感じても、恥ずかしさや、どの診療科に行けばいいのかが分からないなどの理由で、病院に行けずに我慢しているという方も多いのが実情です。

日本における子宮脱の患者数や治療については、「骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱脱・膀胱瘤など)とは?」の「骨盤臓器脱の医療現場と現状」でご紹介しています。

子宮脱の症状と検査方法

病院を受診する場合、一般的には婦人科と考えられがちですが、膀胱瘤など多臓器下垂も併発している場合も多いため、ウロギネコロジー(婦人科と泌尿器科が一緒になった科)や女性泌尿器科などの、骨盤臓器脱全般を診れる専門の科があります。予め医療機関に問合せをするか、ネットで調べるなどして、骨盤臓器脱の治療を行っているか確認してから受診されることをお薦めいたします。

初期症状

初期症状には、以下のようなものがあります。

  • 下腹部の違和感や下垂感
  • 太ももの間にものが挟まったような違和感や不快感
    (膣にピンポン球みたいなものが触れるという表現をされます。)
  • ボールの上に座っているような感覚がある
  • 骨盤、腰回りの引っ張り感または重い感触
  • 座ると何かが中に入り、立つと何かが落ちてくる
  • 長時間の立ち仕事後に悪化する
  • 午前中は何ともないが、午後になると違和感を感じる

進行したときの症状

症状が進むにつれて、以下のような症状が出てきます。

  • 頻尿や尿漏れ、尿が出にくいなどの排尿困難
  • 便秘または排便困難
  • 腰痛、骨盤痛
  • 性交障害、性交痛
  • 歩行困難
  • 痛みやかゆみ、膣出血
  • 骨盤領域の膨満感、重苦しさまたは痛み
  • 膣の膨らみ

重症度

  • 第1度:子宮が膣に落ちます。膣の入り口から1㎝まで近づいてる状態です。(子宮下垂)
  • 第2度:子宮が膣口のすぐ内側のレベルまで下がります。排尿障害を引き起こします。
  • 第3度:子宮が膣外へ突き出してきます。
  • 第4度:子宮全体が膣外に完全に出てきている状態です。

検査

診察時は、問診、内診、その他の検査が行われます。
 

問診

いつ頃から、どの様な症状があるのか
初経・閉経を迎えた年齢や月経周期などの月経歴について
妊娠や出産歴について
既往歴や過去の手術歴について
排尿や排便について
生活習慣について
 

内診

診察は主に触診と、器具を用いた内診が行われます。
最初に、膣の状態や外陰部の異常を確認します。
子宮脱の程度を確認するために、腹圧を加え子宮の下垂の程度を観察します。
診察には主に触診と内診に加えて、膀胱内に造影剤を入れレントゲン検査が行われます。以前は、排尿をしながらの撮影だったため、なかなか排尿できず患者さんの精神的負担も伴いました。最近では、尿道にチェーンを入れることにより、簡単に撮影ができるようになりました。尿道の位置を把握することにより、排尿困難の有無、術後尿失禁の可能性などの評価をします。
 

その他、MRIやCT、超音波検査やウロダイナミクス検査などは、患者さんの状態に合わせ、医師が判断し、必要であれば行われます。

治療法

子宮脱の治療には、自分で出来る予防法から、保存的治療や手術療法があります。ご自身の年齢や身体の状態、子宮脱の状態や、生活状況などに応じて適切な方法を選択します。

治療方法について詳しくはこちらのページをご覧ください。
サポーター、ペッサリー…骨盤臓器脱の医療機器には何がある?

日頃の生活でできるもの

骨盤底筋の力に対して脂肪の量が多いと、骨盤臓器脱を悪化させます。医師と相談のうえ、BMIなどからみて少し太り気味である場合には、ダイエットを検討してみましょう。もちろん、無理なダイエットは禁物です。

加えて、下腹部に強い力が入ることは、子宮脱を悪化させる原因になります。そのため、日頃の生活から、そのような動作がないように気をつける必要があります。

また、喫煙習慣は子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱を悪化させる原因になります。もし喫煙習慣がある場合には、禁煙をおすすめします。

外科的治療

子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の根治には、外科的治療が必要です。ただし、すべての方に手術が必要というわけではないため、ご自身の年齢や健康状態、性生活の有無、今後の妊娠希望などを総合的に加味して判断します。

手術については以下のページもご覧ください。
骨盤臓器脱 (子宮脱・性器脱) の手術、リスクやデメリットはある?

温存療法

手術をせずに、今の症状を緩和することも可能です。これらは温存療法とも呼ばれます。

これまでは、膣内にドーナツ状のリングを挿入し、臓器が落ちてこないように支える「リングペッサリーの挿入」という方法が一般的でした。
しかしリングペッサリーは、着脱の難易度が高いことに加え、合併症のリスクもあります。

最近では、徐々にではありますがフェミクッションという医療機器が使われるようになってきています。
(フェミクッションは、女性医療研究所の商品です。)

フェミクッションは、これまでつらい思いをされていた患者様のために、骨盤臓器脱の治療と予防を目的とした、新しい治療法として考えられた医療機器です。
身体に接する部分は、適度な圧力で膣を優しくサポートできるシリコン製の特殊なクッションを使用しています。このクッションのおかげで有効性と安全性において高い評価を得ています。

フェミクッションについてはこちらのページをご覧ください。

予防方法

子宮脱はすべての状況で予防できるとは限りません。ただし、リスクを軽減するためにいくつかのことを行うことができます。定期的な運動をする、健康的な体重を維持する、骨盤底筋体操の練習、慢性敵な便秘や咳などの治療などが主な予防方法として挙げられます。
初期の子宮脱の方には骨盤底筋体操で骨盤の筋肉を鍛えます。骨盤底筋体操はケーゲル体操とも呼ばれます。(運動を発見したケーゲル博士に由来。)症状を改善や、進行を遅らせることはもちろん、軽度の腹圧性尿失禁にも有効です。
骨盤底筋体操は、寝ながら、椅子に座って、立ったままなど様々な体勢で行うことが出来ます。
 
【骨盤底筋体操の方法】
寝ている状態:仰向けに寝て、足を肩幅に開き、膝を少し立てる
椅子に座る状態:椅子に浅く腰掛ける
立っている状態:つま先立ちになる
 
深呼吸をして身体の力を抜く
肛門や膣をしめてゆっくり10数える
そして力を抜いてリラックス
これを10回繰り返し、朝晩行うことがお薦めです。

子宮下垂と子宮脱の違いは?

「子宮脱」と「子宮下垂」という言葉は、症状としては同じ「下腹部の違和感や下垂感」を伴うものに対して使われますが、程度の違いで使い分けられることが多いようです。
「子宮脱」の場合は、子宮が膣から脱出している場合を指すことが多く、「子宮下垂」の場合はまだ脱出はしていない状態だが、下がってきているような状態を指すことが多いようです。

子宮下垂の場合、生活習慣の改善や骨盤底筋体操を行えば、手術や器具を使わずとも改善がみられますが、子宮脱まで進行している場合には、「フェミクッション」「ペッサリー」もしくは「手術療法」を用いて予防・治療を行う必要があります。

よくある質問

Q:子宮脱と子宮下垂の簡単な見分け方はある?

A:子宮が膣から脱出している状態を子宮脱と呼びます。出ていないものの子宮が下がっており、股に違和感がある・尿もれが多くなったと感じる場合は子宮下垂の可能性もあります。

Q:子宮脱または子宮下垂は出産したことがなくてもなる?

A:なります。骨盤底筋群という、骨盤内の臓器を支える支持組織が緩むと、子宮下垂や子宮脱になる可能性があります。

Q:自分で治すことはできる?

A:フェミクッションによる予防や治療を行うことができます。フェミクッションは、臓器を膣内に戻した状態で装着します。
フェミクッションは、患者さん自身ができる方法です。定期的に病院に通院できない、合併症や経済的理由ですぐに手術ができない、手術までリングペッサリーを外している期間など、履くだけで簡単に臓器を体内に収めて、通常の日常生活を送ることができます。
フェミクッションについて詳しくはこちら

Q:治療にかかる費用はどれくらい?保険は適用される?

A:2万円から30万円を超える手術まで選択肢は幅広くあります。一部治療法は保険適用となります。フェミクッションは自己負担(医療費控除が受けられます)です。
費用について詳しくはこちら

Q:手術後に再発する可能性はある?

A:可能性はあります。手術は多くの術式があるので、手術については医師に相談してください。手術後の再発予防に、フェミクッションが使われることがあります。

参考文献

加藤久美子,鈴木省治:腹圧性尿失禁・骨盤臓器脱の症状診断とメッシュ手術の動き.日本医事新報,4456:49-55, 2009.

 

加藤久美子編:別冊きょうの健康「女性の尿トラブル」,2010刊行

 

Paulo Palma et al. Femicushion™: a new pessary generation – pilot study for safety and efficacy. Pelviperineology 2016; 35: 44-47

 

加藤久美子,鈴木省治 骨盤臓器脱に対するサポート下着の使用経験 臨床泌尿器科 第64巻 第10号 別冊 2010年9月20日発行

 

加藤久美子,鈴木省治, 鈴木晶貴ほか:女性骨盤底疾患の保存的治療:サポート下着(フェミクッション). 日本女性骨盤底医学会誌9:30-36, 2012

 

加藤久美子,鈴木省治, 鈴木弘一, 服部良平:排尿障害プラクティスの保存的療法:日本女性骨盤底医学会誌2013年6月10日発行 第21巻2号

 

FDA takes action to protect women’s health, orders manufacturers of surgical mesh intended for transvaginal repair of pelvic organ prolapse to stop selling all devices

 

FDA Orders Mesh Manufacturers to Stop Selling Devices for Transvaginal Repair of Pelvic Organ Prolapse

 

Hampel C, et al. Urology. 1997;50 (suppl 6A):4-14.
Samuelsson et al, Am J Obstet Gynecol 1999

 

Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse

この記事の監修医師

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

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この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社女性医療研究所 代表取締役

三井 桂子

株式会社女性医療研究所 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、女性医療研究所を通じて発売。

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