
このページの監修医師
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「尿もれ改善には骨盤底筋トレーニングがよいと聞いたけど、どんな風にやればいいの?」と効果的なやり方をお探しではありませんか。
骨盤底筋トレーニングは、尿もれや骨盤臓器脱の症状改善をはじめ、体型維持・ストレス緩和などさまざまな効果が期待できます。日常生活に取り入れて、将来のトラブルを予防しましょう。
本記事では、骨盤底筋トレーニングのやり方やポイントを紹介します。骨盤底筋が緩んで骨盤臓器脱になった際の治療法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
骨盤底筋は、骨盤の底部にあり、前は恥骨から後ろは尾骨まで、左右ではお尻にある両側の座骨の間あたりに位置します。肛門挙筋・外肛門括約筋・外尿道括約筋といった複数の筋肉の総称で、骨盤底筋群とも呼ばれます。
骨盤底筋は、膀胱や子宮、直腸などの臓器を支えるほか、排尿・排便をコントロールするうえで重要な役割を担う筋肉です。妊娠・出産・日常生活の傾向などによってダメージを受けやすく、骨盤底筋が緩むことで尿もれや骨盤臓器脱を引き起こします。
加齢によって女性ホルモンが減少すると、骨盤底筋の機能がさらに低下しかねません。日常生活に支障をきたすため、更年期以降の女性にとって大きな問題です。
骨盤底筋トレーニングのやり方を5つ紹介します。
1.仰向けで行うトレーニング
2.床に座ってできるトレーニング
3.椅子に座った姿勢でのトレーニング
4.立って行うトレーニング
5.歩きながらできるトレーニング
骨盤底筋には、腟や肛門を締め続ける「遅筋」と、くしゃみや咳など瞬発的な圧力に対して使われる「速筋」があります。両方を鍛えることが理想であるものの、初心者の方は、骨盤底筋に占める割合が多い遅筋のトレーニングから始めましょう。
紹介する5つのトレーニングで遅筋を鍛え、骨盤底筋に力を入れる感覚をしっかり身につけてください。
仰向けでできる骨盤底筋トレーニングの流れは、以下のとおりです。
1.背中全体が床につくように寝転がる
2.腕は体の横に置く
3.膝を立て肩幅に足を開く
4.体の力を抜く
5.尿道・腟・肛門をギュッと締めて10秒間キープする
6.力を抜いて10秒間緩める
7.5~6を10回繰り返す
8.1日に5セット以上を目安に行う
リラックスしやすい基本の姿勢である仰向けは、体への負担も少ないため、腰痛がある方にも適しています。
仰向けの状態でお尻を持ち上げる方法もあります。背中を床につけた姿勢より負荷が高く、骨盤底筋以外にも全身を鍛えられる運動です。
仰向けで行うトレーニングは、起床時や就寝前といった横になるタイミングを活用すると習慣にしやすいのでおすすめです。
床に座ってできる骨盤底筋トレーニングのやり方を紹介します。
1.壁に軽くもたれかかる
2.膝を立ててから足を軽く開く
3.体の力を抜く
4.尿道・腟・肛門をギュッと締めて10秒間キープする
5.力を抜いて10秒間緩める
6.4~5を10回繰り返す
7.1日に5セット以上を目安に行う
壁にもたれ過ぎると、背中が丸まりやすいため注意してください。あぐらの姿勢でもトレーニングできますが、頭の位置が左右の座骨の中心にくるよう意識して行いましょう。
テレビを見たり洗濯物を畳んだりする際など、床に座るタイミングを上手に使うと無理なく継続できます。
椅子に座ったまま骨盤底筋トレーニングを行うやり方は、以下のとおりです。
1.椅子に骨盤を立てた状態で座る
2.膝の下にかかとがくるように足を下ろし軽く開く
3.体の力を抜く
4.尿道・腟・肛門をギュッと締めて10秒間キープする
5.力を抜いて10秒間緩める
6.4~5を10回繰り返す
7.1日に5セット以上を目安に行う
椅子に座りながら行うトレーニングの途中に、背筋を伸ばすことばかりに意識を向けると反り腰になりかねません。左右と前後の傾きに気をつけて、骨盤をまっすぐ立てるように意識してください。
トイレに座ったタイミングを活用すると、継続してトレーニングしやすいのでおすすめです。
立っている状態での骨盤底筋トレーニングは、以下の手順で行いましょう。
1.机や壁に手をかけてやや前傾姿勢で立つ
2.両手両足を肩幅に開く
3.両手に体重を乗せる
4.背筋をまっすぐに伸ばし、体の力を抜く
5.尿道・腟・肛門をギュッと締めて10秒間キープする
6.力を抜いて10秒間緩める
7.5~6を10回繰り返す
8.1日に5セット以上を目安に行う
かかとはつけたまま爪先を90度に開き、腟や肛門を締めたり緩めたりする方法もあります。左右の内ももを近づけ、背筋を伸ばしながら行うと効果的です。体が反ったり猫背にならないよう注意してください。
立ったままできるトレーニングは、バス・電車での移動時間や家事をしながらなど、さまざまな場面で取り入れられます。生活に取り入れるタイミングを事前に決めておくことが継続のコツです。
歩きながら行う骨盤底筋トレーニングは、正しい歩き方に注意して行うことが大切です。
骨盤底筋トレーニングの方法 |
1.尿道・腟・肛門を締めて5歩進む 2.締めた骨盤底筋を緩めて5歩進む 3.1~2を繰り返す |
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正しい歩き方のポイント |
・顎を引いて目線を15mほど前に向ける ・背筋を伸ばして爪先を進行方向にまっすぐ向ける ・歩くときはかかとから着地して体重を爪先へ移動させる ・爪先で地面を蹴り出すように意識する |
上半身が揺れないよう注意し、骨盤から足を出すイメージで歩きます。呼吸を止めずに、尿道や肛門を引き上げる感覚で骨盤底筋を締めるといいでしょう。運動効果をより高めたいなら、歩く前に軽いストレッチをしてください。
歩き方と骨盤底筋を同時に意識する必要があるため、はじめは難しく感じるかもしれません。寝転がった状態や座った姿勢でのトレーニングに慣れてからトライしましょう。
骨盤底筋トレーニングをする際は、以下の4つのポイントを意識すると、より効果的です。
1.正しい姿勢・締め方を意識する
2.呼吸を止めない
3.毎日少しずつ行う
4.根気よく継続する
焦らず長期的な視点で毎日コツコツ取り組みましょう。
骨盤底筋トレーニングは、正しい姿勢や腟・肛門などの締め方を意識しながら行うことが重要なポイントです。
猫背や反り腰では、トレーニングの効果を十分に発揮できません。リラックスした状態で背筋を伸ばし、視線は前に向けましょう。
トレーニングでは、骨盤底筋のみを鍛えることが肝心です。腹筋・お尻・太ももが力んでいる場合、腹圧がかかって内臓が下がり、逆効果になる可能性があります。骨盤底筋を締める正しい動作は、尿や便を我慢する感覚をイメージするとわかりやすいでしょう。
締め方に変化をつけると、同じ動作でも違う筋肉のトレーニングになります。速筋のトレーニング方法は、尿道・腟・肛門をリズミカルに「キュッキュッ」と収縮・弛緩させて行います。遅筋を鍛えたいときは5秒ずつゆっくりと締める・緩めるを繰り返してください。
筋肉の収縮・弛緩テンポに変化をつけると、効率よく骨盤底筋が鍛えられます。
骨盤底筋トレーニングのポイントの1つは、呼吸を止めないことです。
呼吸にともなって横隔膜が上下に動くと、連動して骨盤底筋が引っ張り上げられて締まったり、下がって緩んだりします。横隔膜と連動して動くことで自然に骨盤底筋が鍛えられ、筋力アップが望めるため、呼吸に合わせたトレーニングは効率的だといえます。
息を吐く際に腟や肛門をギュッと締め、吸うときは力を抜いて緩めましょう。お腹に力が入らないよう注意しながら、静かにゆっくりとした呼吸を意識してください。
骨盤底筋トレーニングのポイントは、毎日の日常生活に少しずつ取り入れて実行することです。
トレーニングを習慣化すると、大きな負担を感じずに筋力を保てます。以下のような毎日行う行動に紐づけて行うとよいでしょう。
・起床・就寝
・家事
・排尿・排便
・通勤
・仕事の休憩中
遅筋を鍛える場合は1つのトレーニングを1日50回以上、速筋であれば30~50回程度を目標にトレーニングします。慣れないうちは回数を少なくしてもかまいません。すきま時間をうまく活用して少しずつ習慣化し、徐々に回数を増やしてください。
骨盤底筋トレーニングに即効性はないため、根気よく継続して行うことが大切です。
個人差があるものの、骨盤底筋トレーニングの効果を実感できるまでには数ヵ月ほどかかるといわれています。
トレーニングをして尿もれや骨盤臓器脱の症状が一時的に改善した場合でも、継続しなければ再び悩まされる可能性があります。症状が改善したあとも、継続することが重要です。
慣れるまでは、毎日のトレーニングをつらく感じる方もいるかもしれません。しかし、骨盤底筋は加齢にともない少しずつ衰えていくものです。日々のトレーニングを積み重ねることで将来の健康維持に大きな差が生まれ、生活の質が上がるでしょう。
骨盤底筋トレーニングを行う効果は、以下のとおりです。
・骨盤臓器脱の予防・症状軽減
・尿もれの改善
・体型の維持
・ストレス軽減
筋力増加と血流改善により、筋肉の柔軟性や耐久性が向上します。日常生活のさまざまな不快症状の軽減が見込め、生活の質を向上させる手助けになるため、コツコツと継続して取り組みましょう。
骨盤底筋トレーニングをすると、骨盤臓器脱の予防や症状の軽減が期待できます。
骨盤底筋が弱くなると、膀胱や子宮、直腸などを支えられなくなり、臓器が腟から出てしまう骨盤臓器脱を発症します。トレーニングにより骨盤底筋を強化できれば、臓器の支持力が向上し、脱出症状の軽減が可能です。
ただし、すでに臓器が腟から脱出している状態の方は、骨盤底筋トレーニングは行えません。何らかの方法で、臓器を体内に収めればトレーニングが可能となります。
骨盤臓器脱は、出産を経験した女性の3~4割程度に見られるといわれており、決して珍しい病気ではありません。現在骨盤臓器脱の症状がない方でも、身近なケアとして骨盤底筋トレーニングを取り入れて対策することが肝心です。
排尿コントロールの役割もあるため、骨盤底筋をトレーニングすると尿もれの症状改善が期待できます。
骨盤底筋が緩むと、尿道を締める筋力が低下し、くしゃみや咳をした弾みに尿もれする「腹圧性尿失禁」を発症しかねません。40歳以上で尿失禁を経験している女性は全体の43.9%もおり、約半数は腹圧性尿失禁といわれています。
腹圧性尿失禁は、主に骨盤底筋トレーニングでの治療が行われ、改善が見込める疾患です。妊娠・出産・加齢といった原因で、骨盤底筋が緩む可能性は誰にでもあります。骨盤底筋トレーニングを習慣化し、尿もれ改善につなげましょう。
女性にとって気になる体型の維持にも、骨盤底筋トレーニングが有効です。骨盤底筋が緩むと子宮や膀胱などを支える力が弱まるため、臓器が重力で下がって体型が崩れる一因となります。
骨盤底筋は腹圧をコントロールするインナーマッスルの一部であり、緩むと体幹が不安定になり、姿勢悪化につながることにも注意が必要です。
姿勢が悪くなると、呼吸が浅くなって血流が滞り、冷え性やむくみを引き起こす可能性があります。体の歪みによる内臓の機能低下から、代謝が落ちるリスクも高まります。
骨盤底筋は体全体の健康とボディラインに関わる筋肉です。美しい姿勢やプロポーションの維持のためにも、意識的にトレーニングで鍛えることがおすすめです。
骨盤底筋トレーニングは、ストレスを軽減する効果もあります。
トレーニングによって、体幹が安定して姿勢が改善されたり、横隔膜の動きがよくなったりすると、深い呼吸ができるようになります。深い呼吸には副交感神経を優位にする働きがあるため、リラックス効果やストレス緩和にも役立つでしょう。
自分の体をコントロールできる感覚が得られることも骨盤底筋トレーニングのメリットです。自己効力感が高まり、ストレスや不安の軽減にも寄与します。
骨盤底筋トレーニングは、体だけでなく精神的にも大きな効果が期待でき、健康を支える重要な要素だといえます。
骨盤底筋トレーニングによって症状改善が見込める骨盤臓器脱とは、腟から子宮や膀胱、直腸などの臓器が脱出する病気です。
名前から想像すると恐ろしく思えますが、決して珍しい病気ではありません。昔は「なすび」や「なすびが下がる」などと呼ばれて広く知られていた病気で、現在も多くの方が悩んでいます。
骨盤臓器脱の症状・原因・治療法について詳しく解説します。骨盤臓器脱を理解し、自身が抱えるリスクとトレーニングの重要性を知るきっかけにしてください。
骨盤臓器脱の主な症状は、以下のとおりです。
初期症状 |
・下腹部や腟の違和感がある ・入浴時、腟から出ている丸い塊に触れられる ・夕方になると陰部の不快感や異物感が強くなる |
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進行した場合の症状 |
・排尿・排便障害がある ・常に陰部の異物感がある ・脱出した臓器が擦れて出血する ・下がってきた臓器が戻りにくい ・歩きにくい ・性交時に痛みがある |
軽度の骨盤臓器脱であれば、骨盤底筋トレーニングで改善が見込めます。日常生活に大きな支障をきたし、大きなストレス源となりかねません。
骨盤臓器脱は違和感を覚えた時点で、早めに受診・対策をしましょう。
骨盤臓器脱は、以下の原因があると発症しやすくなります。
・妊娠・出産
・加齢
・慢性的な腹圧の高さ
妊娠・出産は骨盤底筋が緩む大きな原因です。妊娠中はお腹の重みに、出産時は赤ちゃんが産道を通ることで、ダメージを負いやすいといえます。3,500g以上の大きな赤ちゃんを産んだり、出産回数が多かったりする方も、リスクが高くなりがちです。
女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が加齢によって減少すると、骨盤底筋の柔軟性や弾力性を低下させます。長時間の立ち仕事や重い物を持つ作業といった、腹圧がかかりやすい環境下にある人も注意が必要です。
喘息や気管支炎による慢性的な咳症状の人や、便秘・肥満の方も、骨盤底筋に負荷をかけるため注意してください。
骨盤臓器脱になりやすい傾向のある人は、リスクが高いことを自覚し、トレーニングをしたり、日常生活を見直したりしましょう。
骨盤臓器脱の治療法には、以下の選択肢があります。
・骨盤底筋トレーニング
・手術
・保存的治療法(リングペッサリー・フェミクッションの使用)
軽度の骨盤臓器脱であれば、骨盤底筋トレーニングで症状の改善が期待できるものの、効果が見られない場合は、手術か保存的治療法を選択してください。
骨盤臓器脱を根治するためには手術が必要です。しかし、体の状態や年齢、臓器脱の程度を考慮しなくてはならず、手術に適していない方もいます。
手術を希望しない・受けられない場合は、医療機器であるリングペッサリーやフェミクッションを用いた保存的治療法によって、生活の質の向上を目指します。
リングペッサリーは、下垂してきた臓器を腟内から支える器具です。異物を腟内に入れるため、炎症や違和感など副作用が出る場合もあります。
フェミクッションは、サポーター・ホルダー・クッションを組み合わせて、脱出した臓器を外部から支える医療機器です。体内に挿入する必要がなく、体への負担・リスクがありません。
骨盤臓器脱は、違和感を持ちながらも誰にも相談できず、恥ずかしさから受診に至るまで時間がかかりがちです。違和感があれば早めに治療法を検討することが大切です。
骨盤臓器脱の治療には、骨盤底筋トレーニングやフェミクッションの導入をご検討ください。骨盤底筋トレーニングは骨盤臓器脱をはじめ、尿もれの改善や体型維持にも効果を発揮します。
フェミクッションは子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・小腸瘤などすべての骨盤臓器脱に使用でき、装着直後から出血や痛み、違和感などの症状緩和が可能です。リングペッサリーや手術が適さない、通院が難しい方などにおすすめの治療法です。
フェミクッションは、他人から気づかれにくい下着のようなデザインで、繰り返し洗濯して使用できます。骨盤臓器脱の治療をする際は、フェミクッションで日常生活の不快感を取り除きつつ、骨盤底筋トレーニングで症状の改善を目指しましょう。
永尾 光一 先生
銀座リプロ外科 院長
前・東邦大学泌尿器科教授
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役
三井 桂子
株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。
スターターキット ライトネット購入限定
まずは試してみたい
という⽅に!
セット内容
・サポーター1枚(ミディベージュサポーター)
・クッション 3個(S・M・L各サイズ1個)
・布製ホルダー(フリーサイズ3枚)
・洗浄栓
※スターターキット ライトをご選択の方はミディベージュサポーターのみとなります。
スターターキット
普段の⽣活でしっかり
使いたい⽅に!
セット内容
・サポーター1枚(次の項目で種類・サイズを選択ください)
・クッション 6個(S・M・L各サイズ2個)
・布製ホルダー(フリーサイズ3枚)
・洗浄栓
※コットンの特注サイズは現在在庫切れです。