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長時間の立ち仕事 は子宮脱、骨盤臓器脱になるリスクあり!?その理由と予防について解説

長時間の立ち仕事で、身体に悪い影響がないか心配になることはありませんか?

骨盤臓器脱という疾患は、女性の約10人に1人がかかる可能性のある病気で、長時間の立ち仕事と無関係ではありません。

本記事では、子宮脱や骨盤臓器脱の原因の1つとして考えられる「長時間の立ち仕事をしている」人に焦点を当てて、解説していきます。

子宮脱、骨盤臓器脱とは

骨盤臓器脱とは、女性特有の疾患で、子宮や直腸などの臓器が下垂し、膣外に出てしまう病気のことを総称しています。子宮脱とは、骨盤臓器脱の1つで、子宮の一部やすべてが膣から出てしまう病気のことです。

臓器が体外に出てしまう恐ろしい疾患ですが、女性なら誰にでも起こり得る病気です。実際、女性の約10人に1人が疾患を抱えています。しかし、恥ずかしさなどを原因に通院を避ける方が多いのが現実問題です。

骨盤臓器脱や子宮脱の初期症状としては、下腹部の違和感や歩行時・運動後に感じる何か挟まっているような違和感を覚えることが多いです。また、頻尿や便秘、排便障害や排尿障害などを引き起こす場合もあります。

症状が進行してくると、常に臓器が突出している状態になります。このような症状まで進行した場合、出血や痛みを伴う場合もあり、日常生活に支障をきたします。

骨盤臓器脱が発症するメカニズム

骨盤臓器脱が発症するメカニズム

骨盤臓器脱や子宮脱は、繰り返しの出産や妊娠、加齢や婦人科領域の手術などが要因となり、臓器を支えている骨盤低筋群が弱体化することが原因です。

骨盤低筋群とは、膀胱や子宮、腸などの臓器を支えている筋肉で、骨盤低筋群の働きによって臓器は正しい位置を保てています。

しかし、出産や妊娠などの物理的ダメージ、加齢などによって緩むことがあり、それがきっかけで骨盤臓器脱へと繋がります。また、日常的に重いものを持つような仕事に従事している方、長時間の立ち仕事をしている方、肥満の方などもリスクが高いと言われています。以上が、骨盤臓器脱発症のメカニズムです。

骨盤臓器脱は急に発症するわけではなく、徐々に時間をかけて発症します。発症しないように、または症状が悪化しないように予防することもできる疾患です。

正しい知識の習得や日常生活の小さな積み重ねで、骨盤臓器脱の予防を心がけるようにしましょう。詳しい予防方法については後ほど記載しますので是非一読ください。

長時間の立ち仕事 が子宮脱、骨盤臓器脱になりやすい理由

子宮脱や骨盤臓器脱になりやすい人の特徴の1つとして、「長時間の立ち仕事に従事している」というものがあります。

なぜ長時間立ち仕事をしていると、骨盤臓器脱のリスクが高まるのでしょうか?

理由の一つは、骨盤底に持続的な腹圧のかかる状態になるから、と考えられています。長時間立っていると、意図せず継続的に骨盤底筋に力を加えている状態を作りだしてしまいます。その結果、骨盤底筋が緩んでしまい、骨盤臓器脱へと繋がるのです。

飲食店やアパレル、美容師などの立ち仕事、保育士や介護士、工場などの仕事に従事しており、日常的に長時間の立ち仕事をしつつ重いものを持つ仕事をしている方は、特に注意が必要です。

長時間の立ち仕事 の人ができる、子宮脱、骨盤臓器脱の予防法

長時間の立ち仕事 の人ができる、子宮脱、骨盤臓器脱の予防法

先述した通り、骨盤臓器脱は予防することが可能です。

徐々に進行していく疾患ですが、一度体外に出てしまった臓器は自然にもとには戻せず、根治治療としては手術を行う必要があります。

そのような事態を防ぐためにも、予防を心がけることはとても大切なことです。

しかし、予防のために長時間の立ち仕事を辞める、というのは現実的ではありません。ここでは、長時間の立ち仕事を従事している方でも実践可能な予防方法をいくつかご紹介していきます。

骨盤底筋群を鍛える

骨盤底筋を鍛えるという予防方法が一番簡単に始められるのではないでしょうか。

骨盤臓器脱は、骨盤内の臓器を支えている骨盤低筋群の緩みによって生じることが分かっています。その筋肉の緩みを鍛えることで、結果として骨盤臓器脱の予防に繋がります。

具体的な体操の方法は、意識的に肛門や膣を締めたり緩めたりする、といった簡単なものです。締めたり緩めたりを10回ほど繰り返し、それを朝と夜に行うとより効果的です。

仕事をしながらでもできる運動ですので、毎日気がついたタイミングで行うのと良いでしょう。

また、寝ころんでいてもできる運動ですので、朝起きた時や夜寝る前など、ルーティン化させて運動するのも良いかもしれません。

フェミクッションを使用する

骨盤臓器脱の患者様のために開発された「フェミクッション」という医療器具を使用するのも一つの方法です。

詳しくは、次項で解説します。

フェミクッションの活用

フェミクッションとは、骨盤臓器脱の予防や治療を目的に開発されました。クッションをホルダーに固定し、サポーターで支える下着のような見た目の医療機器です。

患者様個人でご購入いただけるカテゴリーの医療機器で、通院不要で簡単に始めることができます。

前述した通り、根治治療には手術が必要になりますが、家庭の事情や加齢による体力不足、合併症や別疾患との兼ね合いなどにより手術が困難な場合もあります。そのような場合にもおすすめしたいのが、このフェミクッションの活用です。

フェミクッションの使い方は非常に簡単で、年齢制限などもありません。体内に挿入することもありませんので、誰でも不安なく簡単にご使用いただけます。

また、着用するとすぐに症状が緩和されますので、すでに痛みや症状がある方にもおすすめです。お手入れも簡単で洗って繰り返し使用することができますので、経済的にも負担が少なく済みます。

すでに悩んでいる方やリスクの高い方は、ぜひフェミクッションを活用して、予防や治療を行ってみて下さい。

下のMRI画像は、フェミクッションの有効性を示す臨床試験の結果です。骨盤臓器脱の患者様へフェミクッションを装着する前と装着した後のもので、上から順に(a) 膀胱瘤、 (b) 子宮脱、(c) 腸瘤と 直腸瘤、(d) 完全な外反 の画像となります。

半球状の黄色の点線半球状がフェミクッションの位置です。すべての患者様の骨盤臓器脱において、フェミクッションを装着することで脱出臓器を高い位置に支え、臓器脱が改善されているのがわかります。

出典 Nomura Y, Yoshimura Y, et al: Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse. J. Obstet. Gynaecol. Res., 48(5): 1255-1264, 2022

フェミクッションの有効性

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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