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子宮脱セルフチェックシート10項目

子宮脱とは?

子宮脱とは、子宮が下降した状態のことを言い、外陰部に何かが出て触れる感覚がある際には注意が必要です。出産や加齢などにより、骨盤底筋が緩むことが症状の原因としてあげられます。

子宮脱の初期症状に関する詳細は、子宮脱の初期症状とは?もしかして…と思ったらをご覧ください。

気付いた際にはすぐに病院で受診するのがおすすめですが、ご自身が子宮脱なのか、本記事のチェックリストをもとに確認してみましょう。

 

特徴的な症状

子宮脱の特徴的な症状を紹介します。

 

  • ・膣から何かが出ている
    ・太ももの間に何かが挟まっているような不快感
    ・生理時以外でも褐色のおりものや出血がある
    ・膣やその周辺にかゆみがある
    ・残便感や残尿感
    ・便秘
    ・尿漏れ
    ・頻尿
    ・下腹部の違和感

 

上記のような症状がある場合は、子宮脱の可能性があります。中でも、経膣分娩の経験がある方や太っている方、慢性的に咳やくしゃみが出る方は発症しやすいため、より注意が必要です。普段は何も症状がなくても、お腹に力が入ったときなどに発症することもあります。また、午前は問題がなくても、午後になってから症状が出てくることもあります。日頃から気になる症状をチェックしておくと良いでしょう。

初期症状はどんなときに起こる?

子宮脱の初期の段階では自覚症状がない場合もあり、婦人科で指摘されて発覚する例も見られます。

初期は、まだ臓器が腟から完全に出てしまう前の状態で、膣の入り口ギリギリのところまで顔を出している段階です。この段階で違和感があり、異変に気付く方が多いです。

子宮脱の初期症状で自覚できるのは、以下のような状況です。

 

●お風呂に入ったとき
外陰部を洗っているとき、何かぬるっとするもの、コリコリするものに手が当たります。

●腹部に力が入ったとき
しゃがむとき、歩いているとき、介護などのシーンで腹部に力が入ると何かが出てくるような感覚があります。

●重たいものを持ったとき
重たいものを持つときにも腹部に力が入るので、何かが出てくるような感覚があります。

●排尿・排便後に陰部を拭くとき
排便で腹部に力をいれた後、紙で拭くときに違和感があります。

 

日中の活動によって腹圧がかかり臓器が下がってくるので、朝よりも夕方から夜にかけて子宮脱の症状は出やすくなり、下腹部に引っ張られているように重たく感じることもあります。

股の間に何かが挟まっているような感覚があって歩きにくかったり、下着と擦れて出血したりしている場合は、さらに病状が進行している状態です。

また、このような症状は排尿障害や排便障害の原因にもなり得ます。何かが出たり入ったりする感覚が煩わしく、姿勢が悪くなることで腰痛を起こしたり、外出が億劫になり家にこもったりと、日常生活にさまざまな支障をきたします。

下垂・脱出の症状

骨盤臓器脱の初期段階では、臓器の下垂により、下腹部が引っ張られるような違和感や、陰部付近に重さを感じたりします。

臓器の脱出の症状は、「陰部にピンポン玉のようなものがある」「歩行時に擦れて痛い」「股に何かがはさまって歩きにくい」などです。

不快な症状が姿勢を悪くし、腰痛になることもあります。
また、自宅にひきこもりがちになると歩行などの身体能力が低下したり、誰にも相談できず、うつ状態となったりするケースも稀ではありません。

脱出臓器の症状(排尿障害、排便障害)

骨盤臓器脱の症状として、脱出した臓器により膀胱や尿道も下垂するため、排尿障害や排便障害が生じます。

排尿障害では、頻尿や残尿感・尿が出にくい・常に尿意がある、排便障害では便秘・便漏れ・排便困難などの症状が起こります。

最終的に脱出臓器を押し込みながら排尿・排便をするようになると、その度に手が汚れるなど生活の質が著しく落ちてしまいます。自然に治る病気ではないので、予防や治療を行わなくてはなりません。

 

子宮脱の原因

子宮脱に関する詳細は、子宮下垂・子宮脱とは?初期症状や治療法:中高年を中心に起こる病気をご覧ください。

 

子宮脱セルフチェックリスト

下記の項目に5個以上該当する方は注意が必要です。
症状がある場合は医師へ相談されることをお勧めいたします。

項目 チェック
便秘または肥満である。
重いものを持つ仕事に就いている。または就いていた。
尿が出にくい事がある。
くしゃみや咳などで尿漏れを経験した事がある。
入浴をしたとき陰部に丸い物が触れる感覚がある。
いままでに経膣的出産(普通分娩)をした経験がある。
3500g 以上の子を出産した経験がある。
鉗子分娩、吸引分娩の経験がある。
長時間立っていると陰部に不快感を感じたり、
何かが下がってくる感覚がある。
子宮摘出を行った。

羞恥心から受診しない方も多くいらっしゃいますが、気になる場合は早めの受診を検討しましょう。
また、該当数が5個未満の方も、普段から骨盤底筋体操や適度な運動をおこない予防に努めることが重要です。

 

5個以上チェックが付いたら?何科に行くべき?

5個以上チェックが付いたら?何科に行くべき?

上記のセルフチェックで5個以上のチェックが付いたら、クリニックを受診することをおすすめします。何科に行けばいいのか迷われる方が多いですが、産婦人科・泌尿器科・ウロギネ外来のいずれかを受診しましょう。

ウロギネって何?という疑問を持つ方も多いと思います。ウロギネとは、ウロギネコロジー(Urogynecology)の略です。ウロはUrology=泌尿器科、ギネはGynecology=婦人科を表します。泌尿器科と婦人科両方の側面を持つ新しい診療科で、女性の骨盤臓器脱や排尿、排便のトラブル、膣の違和感など女性のデリケートゾーンの悩み全般に対応しています。

ウロギネ外来は近年増えてきていますが、まだ数が多くないのでお住まいの地域では対応しているクリニックが見つからないこともあるでしょう。しかし、ウロギネ外来には女性特有の悩みに特化して、泌尿器科と婦人科の専門知識を有した医師が在籍しています。専門的な治療が受けられるウロギネ外来を受診するメリットは大きいです。

 

子宮脱の治療方法

外科的治療

年齢や身体的な負担を考慮して、手術をおすすめする場合があります。手術には1週間程度の入院が必要になりますが、後述の保存的治療法とは違い根本的に治す治療です。手術の種類はいくつかあり、主に下記の2種類です。年齢や体への負担、術後の生活スタイルによって術式を決定します。

・TVM手術
・LSC手術
・RSC手術

それぞれ簡単に説明します。

 

●TVM手術

TVM手術は、経膣メッシュを用いた骨盤底形成術です。メッシュという網目状のシートで臓器を支える方法です。メッシュが身体の一部としてなじむまで数か月待ちます。

メッシュの挿入は、膣を切開して下垂する臓器と膣壁の間に、膣壁を補強するような形で行います。おなかを大きく切る必要がなく、術中や術後の体の負担が軽いのが特徴です。子宮の摘出をする必要はなく、膣の変形も起こりません。

術後の数か月は生活のペースを落とし、安静にする必要があります。また、術後は性交痛が生じることがあります。

●LSC手術

LSC手術は、TVMと同じくメッシュを用いた手術ですが方法が異なります。腹部に5ミリから1センチほどの穴を数か所あけ、腹腔鏡という手術用のカメラを入れて手術を行います。メッシュで膣を引き上げて背骨の下に固定する手術です。

手術は4時間ほどに渡り、術中の体力が必要なので高齢の方は注意が必要です。比較的若い40代から50代で、術後も日常的に性生活を希望する方に向いています。退院後はすぐに日常生活に戻りたいという方や、かつて膣形成術やTVM手術を受けて再発した方にも向いている手術です。

いずれの手術にも合併症のリスクがあるので、特に体力が落ちている高齢の方の手術は慎重に判断します。また、リスクを考慮し、厳重な術後管理やフォローアップを行う必要があります。合併症としては、膣粘膜へのビラン形成や感染、疼痛などです。

●RSC手術

RSC手術(ロボット支援下仙骨腟固定術)は、骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱脱・直腸脱など)の治療に用いられる手術です。執刀医が「ダ・ヴィンチ」というロボットを操作して治療を行います。ちなみに最新型のロボットは「ダ・ヴィンチXi」です。

下腹部に複数の小さな穴をあけ、膣にメッシュを縫合して仙骨に固定させることで、臓器が下垂しないようにします。RSC手術には主に以下のメリットがあり、繊細な縫合をスムーズに行えます。

・手ブレを抑えられる
・拡大した視野で鮮明な3D画像を見られる
・人の手首では実現できない広い関節可動域がある

ダ・ヴィンチは高価なので、もともとは大病院を中心に導入されており、神経温存を目的としたガンの手術に用いられていました。ただ、近年は操作に慣れている術者が骨盤臓器脱手術に利用しています。また、RSC手術は2020年から保険適用になりました。

 

保存的治療法

手術のほか、骨盤底筋体操やリングペッサリーの着用、フェミクッションの活用が保存的治療法としてあげられます。

リングペッサリーは、膣の中にリングを入れ、子宮が落ちてくるのを支える手法です。ご自身で着脱できるように指導がおこなわれるケースもありますが、多くは2~3か月に1回通院が必要になります。

近年ではペッサリーが合わなかったり、感染症のリスクを危惧する方に向けて「フェミクッション」の活用が勧められています。
フェミクッションは、下着のように履くだけで子宮脱をはじめとした骨盤臓器脱の治療や予防ができる商品です。着脱もかんたんで通院も必要ないため、日中時間がとれないという方にもおすすめです。

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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