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子宮脱と妊娠の関係。産前産後の子宮脱は胎児に影響ありますか?

子宮脱とは、骨盤底の筋肉と靭帯が伸びて弱まり、子宮の正常な支持が失われると膣へ下垂する症状で、症状がひどくなると膣外へ脱出します。骨盤臓器脱の疾患の一つです。この子宮脱になると、妊娠することはできなくなってしまうのでしょうか。また、妊娠中に子宮脱になってしまったら、お腹の子どもは大丈夫なのでしょうか。妊婦さんの疑問にお答えします。

子宮脱の原因

子宮下垂や子宮脱は、骨盤を下から支える骨盤底の機能不全が主な原因です。子宮が正常な位置より下がっている状態を子宮下垂、さらに悪化して子宮の一部または全部が外陰部から出てくる状態を子宮脱といいます。

女性の骨盤内臓器は多くの筋肉や靭帯や膜で支えられており、妊娠中・出産時のダメージを受けた方、便秘がちで強い腹圧をかけることが多い方などに子宮下垂・子宮脱が起こります。分娩後すぐではなく、閉経期頃から増えて50歳代の発症がほとんどです。

また、もともと骨盤底筋の力が弱く子宮が下垂気味の方は、妊娠中にホルモンの関係で筋肉が弛緩されやすいため、胎児のいる子宮の重さも加わって子宮脱を発症することがあります。

子宮脱の治療

基本的には自覚症状があってから治療を始める方が多く、治療には保存的治療と手術がありますが、妊娠中は手術は行われません。

保存的治療

運動療法

症状が軽度から中等度の場合、継続的に骨盤底筋体操を行えば効果が現れます。

薬物療法

漢方薬、女性ホルモンなどがあります。便秘気味の方には、便を柔らかくする薬の処方があります。

リングペッサリーや、骨盤臓器脱用の装具(フェミクッション)の着用

手術を望まない方、病気や高齢で手術が難しい方などに使用し、子宮が下がってこないように支えます。

手術

最も効果的な治療法ですが、再発の可能性もあります。従来は下がった箇所を摘出したり、緩んだ部分を縫い縮めたりする手術が多く行われました。最近ではメッシュ状のシートを入れ、支える力が弱まっている箇所をハンモックのように補強し修復する骨盤臓器脱メッシュ手術(TVM)や、腹腔鏡下仙骨膣固定手術(LSC)、ロボット支援下仙骨膣固定術(RSC)が注目されています。

妊娠中は生活習慣に気をつけ、体重管理をしっかり行うようにしましょう。重い物を持ち上げないことや、咳の治療、排便時に下腹部に力を入れないようにするなど、なるべく安静に過ごすことが大切です。

お腹の子どもは大丈夫?

頻度としては多くはありませんが、第一子出産時に赤ちゃんが子宮とともに出てきたり、出産後に子宮脱になってしまうと、第二子妊娠中に子宮脱になる場合があります。

妊娠中に子宮脱を併発をしていても、直接胎児には影響はありません。

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流産や早産の可能性はある?

妊娠中の子宮脱に対しても、リングペッサリーが使われます。しかし、リングペッサリーを使用すると感染リスクが高まるのと、子宮頸部への刺激にもつながり、流産や早産のリスクも高くなります。感染リスクを避けるために、フェミクッションを使用されることがあります。

妊娠中、子宮が完全に膣外に出てしまう可能性はある?

通常は、胎児が大きくなるにつれ子宮も大きくなることから、妊娠20週を過ぎると殆どの場合は体内に入ります。しかし、稀に出産時まで出てきた状態の方も見受けられます。

身体に負担なく子宮脱を治療するフェミクッション

この状態で、自然分娩は可能?

通常は問題なく自然分娩できます。しかし、頸管熟化不全などが起きた場合などは、緊急帝王切開となることもあります。

妊娠中に骨盤臓器脱になってしまったら:気をつけるべきこと

骨盤臓器脱の症状にもよりますが、尿道瘤を併発している場合は、尿閉になることもあります。尿閉になると、おしっこが出にくいなどの症状が出てくると、腎機能にも影響するので注意が必要です。

分娩後3ヵ月以上経過して、子宮脱が再発なら早めに対策を

出産で出てきた子宮は、産後しばらくして体内に戻ることがほとんどです。しかし、一度戻った子宮脱が再発した場合は、専門医を受診するなど、早めに対策をすることが重要です。治療には、保存的なものと手術がありますが、妊娠を望む場合や妊娠の可能性がある年代においては手術は通常は適応外となります。フェミクッションやリングペッサリーなどの保存的治療での対策が行われる場合がほとんどです。

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フェミクッションの有効性(臨床試験の結果から)

MRI画像は、骨盤臓器脱の患者様へフェミクッションを装着する前と、装着した後のものです。上から、(a) 膀胱瘤、 (b) 子宮脱、(c) 腸瘤と 直腸瘤、(d) 完全な外反 となります。

黄色の点線(半球状)がフェミクッションの位置です。すべての患者様において、フェミクッションの装着によって脱出臓器を高い位置に支え、骨盤臓器脱が改善されているのがわかります。

出典 Nomura Y, Yoshimura Y, et al: Magnetic resonance imaging evaluation of the effectiveness of FemiCushion in pelvic organ prolapse. J. Obstet. Gynaecol. Res., 48(5): 1255-1264, 2022

フェミクッションの有効性

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出産後に気をつけるべきこと・考えられるリスク

子宮脱と妊娠の関係。産前産後の子宮脱は胎児に影響ありますか?

最も骨盤臓器脱のリスクとなるのは、妊娠、出産です。妊娠や出産によって、子宮を支えている靭帯が劣化します。3500グラム以上の胎児の出産、難産もリスクとなります。また、一人目より二人目と出産回数が増えるとともに、リスクも高くなります。
予防としては、定期的な骨盤底筋体操が有効です。しかし既に臓器が膣から出ている場合は、骨盤底筋体操自体ができないので、治療が必要となります。
治療には、手術療法と保存的治療法があります。将来的に挙児希望の場合は、保存的治療法で経過観察をする場合が多いです。しかし、手術には様々な方法があるので、担当医によっては手術を薦められることもあります。
保存的治療法には、リングペッサリーの装着や、骨盤臓器脱用の装具(フェミクッション)があります。これらを使うことにより、臓器を膣内に収めておくことができるため、不快な症状を改善することができます。

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子宮脱になったあと、妊娠はできる?

子宮脱になったからと、妊娠ができなくなることはありません。また、妊娠中に子宮脱や骨盤臓器脱の症状があっても、直接胎児に影響を及ぼすことはありません。しかし、子宮脱があると、性行為の時に性交痛を感じたり、性交渉ができない場合もあるので、放置せずに治療することが必要となります。

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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