
このページの監修医師
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子宮脱とは、骨盤底の筋肉と靭帯が伸びて弱まり、子宮の正常な支持が失われると膣へ下垂する症状で、症状がひどくなると膣外へ脱出します。骨盤臓器脱の疾患の一つです。この子宮脱になると、妊娠することはできなくなってしまうのでしょうか。また、妊娠中に子宮脱になってしまったら、お腹の子どもは大丈夫なのでしょうか。妊婦さんの疑問にお答えします。
頻度としては多くはありませんが、第一子出産時に赤ちゃんが子宮とともに出てきたり、出産後に子宮脱になってしまうと、第二子妊娠中に子宮脱になる場合があります。
妊娠中に子宮脱を併発をしていても、直接胎児には影響はありません。
妊娠中の子宮脱に対しても、リングペッサリーが使われます。しかし、リングペッサリーを使用すると感染リスクが高まるのと、子宮頸部への刺激にもつながり、流産や早産のリスクも高くなります。感染リスクを避けるために、フェミクッションを使用されることがあります。
通常は、胎児が大きくなるにつれ子宮も大きくなることから、妊娠20週を過ぎると殆どの場合は体内に入ります。しかし、稀に出産時まで出てきた状態の方も見受けられます。
通常は問題なく自然分娩できます。しかし、頸管熟化不全などが起きた場合などは、緊急帝王切開となることもあります。
骨盤臓器脱の症状にもよりますが、尿道瘤を併発している場合は、尿閉になることもあります。尿閉になると、おしっこが出にくいなどの症状が出てくると、腎機能にも影響するので注意が必要です。
最も骨盤臓器脱のリスクとなるのは、妊娠、出産です。妊娠や出産によって、子宮を支えている靭帯が劣化します。3500グラム以上の胎児の出産、難産もリスクとなります。また、一人目より二人目と出産回数が増えるとともに、リスクも高くなります。
予防としては、定期的な骨盤底筋体操が有効です。しかし既に臓器が膣から出ている場合は、骨盤底筋体操自体ができないので、治療が必要となります。
治療には、手術療法と温存療法があります。将来的に挙児希望の場合は、温存療法で経過観察をする場合が多いです。しかし、手術には様々な方法があるので、担当医によっては手術を薦められることもあります。
温存療法には、リングペッサリーの装着や、骨盤臓器脱用の装具(フェミクッション)があります。これらを使うことにより、臓器を膣内に収めておくことができるため、不快な症状を改善することができます。
子宮脱になったからと、妊娠ができなくなることはありません。また、妊娠中に子宮脱や骨盤臓器脱の症状があっても、直接胎児に影響を及ぼすことはありません。しかし、子宮脱があると、性行為の時に性交痛を感じたり、性交渉ができない場合もあるので、放置せずに治療することが必要となります。
永尾 光一 先生
東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長
昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。
所属医療機関
株式会社女性医療研究所 代表取締役
三井 桂子
株式会社女性医療研究所 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、女性医療研究所を通じて発売。