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高齢者が子宮脱・骨盤臓器脱に気をつけるべき理由とは?治療法と予防法

骨盤臓器脱とは?

骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱瘤など)とは、膣のヘルニアなどとも呼ばれ、子宮・膀胱・尿道・小腸・直腸などが、女性器(膣)に下垂し膣外に出てきてしまう病気です。特に高齢者でよく発生し、リスクも高いと言われています。昔は「なすび」「なすびが下がる」とも言われていました。昔から知られている病気であるということです。

骨盤臓器脱の症状とは?

骨盤臓器脱の主な症状は以下のとおりです。

  • ●陰部にピンポン玉のようなものが触れる
    ●座ったときにボールの上に座っているような感覚がある
    ●股の間に何かが挟まっている感じがする
    ●下腹部が引っ張られる、下がってくる感じがする(下垂感)
    ●トイレが近い
    ●尿もれ
    ●尿が出にくい
    ●残尿感
    ●便秘
    ●残便感
    ●腰痛

軽度の場合は、腹圧がかかったときに臓器が体外へ脱出する程度です。長時間の立ち仕事や重い荷物を持ったとき、運動した後に症状が強くなることがあります。就寝中は引っ込んでいることが多いので、朝方は違和感がないのに、夕方になると症状が気になってくる方も多いようです。

重度になると常に脱出した状態になり、歩行しにくくなったり、下着に擦れて出血したりすることも。重力によって下がってくるため、徐々に症状が悪化します。

脱出がひどくなると、脱出したものを中に戻さないと排尿・排便がしにくくなるため、押し込みながら用を足さなければなりません。その度に手を汚してしまうこともあるでしょう。痛みや違和感から外出を控えるようになり、旅行や運動なども制限されることから、生活の質が低下していきます。

歩くときに擦れて痛い、歩きにくい、といった症状があることから、それを庇うために姿勢が悪くなり、腰痛を招くこともあります。

骨盤臓器脱は、上記で解説したように生活の質を著しく落としてしまう病気です。放置していても治るものではありません。羞恥心から医療機関を受診せず「何年も我慢していた」という方も少なくないため、症状が悪化する前に予防・治療を行うことが大事です。

骨盤臓器脱の予防と治療法

骨盤臓器脱の予防・治療として効果的な方法は以下のとおりです。

保存的治療

・骨盤底筋訓練
軽度の下垂なら、骨盤底筋訓練を行って骨盤底の筋肉群を鍛えることで、症状の緩和が期待でき、予防としても効果的です。

骨盤底筋トレーニングとは、日常生活の中で簡単に取り入れられる骨盤底筋を鍛えるトレーニングで、運動を発見した博士の名前に由来してケーゲル体操とも呼ばれています。

骨盤底筋トレーニングを行うことによって、骨盤底筋のゆるみによる臓器脱の予防や進行を遅らせることができ、軽度の腹圧性尿失禁には症状改善も期待できます。

ただし中等度以上の場合、鍛えるだけで改善するのは難しいので医療機関を受診して治療しましょう。

図解付きのセルフトレーニングについての解説はこちら

 

・ペッサリー
膣内にペッサリー(リング)という医療器具を入れて膣壁を支えることで、骨盤内臓器の脱出を防ぎます。ペッサリーは自身で着脱が可能な場合もあります。衛生面の都合上、定期的に交換しなければなりません。

・フェミクッション
フェミクッションは、脱出した臓器が膣内に戻っている状態で膣口をクッションで押さえ、ホルダーとサポーターで押し上げることで支える仕組みです。

ペッサリーよりも簡単で必要なときにご自身で装着できます。下着のようなデザインなので、周囲の人から気づかれにくい仕様です。ペッサリーが合わない方や、手術が受けられない方に向いています。

その他、日常生活で行える予防には以下があります。

  • ●肥満を防ぐ
    ●便秘を改善する
    ●重い荷物を持たない
    ●長時間の立ち仕事を控える

外科的治療

症状が重い場合は手術が必要です。

メッシュという網目状の人工素材で臓器を支える「経腟メッシュ手術(TVM)」や、子宮を摘出して膣壁を一部切除する手術、下垂している腟を縫合して閉鎖する手術、腹腔鏡を用いたLSC、ロボットを用いたRSCなど、さまざまな方法があります。

なぜ高齢者はリスクが高いの?

骨盤臓器脱は閉経後の女性がかかりやすく、高齢になるほどリスクが高くなります。
閉経すると女性ホルモンが低下し、骨盤臓器の支持組織が加齢とともに弱くなり、発症しやすくなります。また、肥満や便秘が症状を悪化させます。

その他、糖尿病、心疾患、高血圧など病気がある場合は手術ができないなど、治療も限定されてしまいます。

高齢者でも手術はできる?

高齢者でも手術はできる?

高齢者でも手術を受けることは可能で、手術による恩恵も多いものの、同時にリスクもあります。
手術は全身麻酔を用いたものとなるため、基礎疾患の多い高齢者では難しい場合があります。
例えば糖尿病、心疾患、高血圧、脳血管疾患、腎臓病などがあると、全身管理が難しくなります。また、抗凝固剤の服用では、一時中断する必要があります。
手術後には、体力低下や認知機能の低下の懸念もあります。

手術について詳しくはこちらのページをご覧ください。

手術なしで症状を軽減するには

手術が難しい方や、手術に抵抗感のある方に対しては、手術以外の方法があります。
骨盤底筋体操、フェミクッションの装着、ペッサリーなどです。

軽症例には、骨盤底筋体操が有効ですが、なかなか治療効果が上がらない場合もあります。

ペッサリーは、自分では着脱が難しく受診が必要で、出血、おりもの過多、疼痛、感染のリスク、匂いが気になることがあります。

フェミクッションは、体内に挿入しないので自分で簡単に付けることができ、合併症のリスクが少なくなっています。自分で洗うことができ、清潔に保たれます。身体に接する部分は、適度な圧力で膣を優しくサポートできるシリコン製の特殊なクッションを使用しています。このクッションのお蔭で有効性と安全性において高い評価を得ています。

この記事の監修医師

永尾 光一

永尾 光一 先生

東邦大学 医学部教授(泌尿器科学講座)
東邦大学医療センター大森病院 リプロダクションセンター
東邦大学医療センター大森病院 尿路再建(泌尿器科・形成外科)センター長

昭和大学にて形成外科学を8年間専攻。その後、東邦大学で泌尿器科学を専攻し、形成外科・泌尿器科両方の診療科部長を経験する(2つの基本領域専門医を取得)。得意分野はマイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域の形成外科的手術。泌尿器科医の枠を超えた細やかな手術手技と丁寧な診察で、様々な悩みを抱える患者さんから高い信頼と評価を得ている。

所属医療機関

この記事の執筆者

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役

三井 桂子

株式会社三井メディカルジャパン 代表取締役。日本における女性疾患についての認知や理解度の低さに危機感をおぼえ、医療機器開発に着手。子宮脱をはじめとする骨盤臓器脱の治療に用いる「フェミクッション」を開発し、三井メディカルジャパンを通じて発売。

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